本研究は,ヒトの呼吸循環-筋運動リズム間の位相シンクロ現象に焦点をあて,位相シンクロが合目的性を持って生じるとする「テレオロジカル仮説」を実験的に検証することを目的とした。トレッドミル上で漸増傾斜歩行運動を行うことにより位相シンクロを誘導した。呼吸循環パラメータの挙動およびNIRSによる下肢筋組織酸素化ヘモグロビン濃度変化から位相シンクロの機能的意義を調査した。位相シンクロ発生時,分時換気量,酸素の換気当量,およびガス交換率が有意に低下し,筋組織の脱酸素化ヘモグロビン濃度が有意に増加した。これらの結果は位相シンクロが換気効率を向上させ,筋の好気的代謝を促進する効果があると推測された。
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