研究概要 |
現有の触覚ディスプレイの駆動プログラムを修正し,受動触によりテキスチャを感じられるようノズルをテキスチャパターンに沿った刺激を提示できるようにし,提示する刺激のデータセットを構築することに成功した.また,ノズル部を非金属素材に変えることで,脳磁界応答を同期信号として計測できるよう修正した。この装置をもって,呈示圧力,刺激間の遅延時間と空間分解能の関係を二刺激の位置弁別実験で得られた正答率から二点弁別閾を求めた.また,空気噴流刺激での遅延時間と二点弁別閾の関係を先行研究で求められているピン刺激での結果と比較,検証を行った.その結果,表3のようにまとめられる.このまとめより,ピン刺激と空気噴流刺激では二点弁別閾の大きさなど,定量的には異なることが分かった.また,遅延時間を付与すると二点弁別閾が低下することや,数十秒の遅延時間を付与してもある程度の二点弁別閾が維持される点など,定性的には同様の傾向であることが分かった.よって,接触呈示と非接触呈示ではその二点弁別閾が定量的に異なる点を考慮することでピン刺激と同様の刺激呈示方法による触覚呈示デバイスの開発を行うことが可能であると考えられる.さらに、掌上の刺激呈示部位の違いにより,体性感覚誘発脳磁界に現れる傾向を捉えることを目的として触覚情報提示時の誘発脳磁界検出実験を行ったところ、distal-proximal,medial-lateralなど,刺激呈示部位が異なっても,触覚受容器の密度や神経支配領域に起因する有意な変化がSIの誘発脳磁界の振幅には見られなかった.今後,刺激に対する知覚量など掌上の刺激呈示部位が脳活動に与える影響を捉えるためには,先行研究で,脳活動の後期成分がより知覚量との相関が高いことよりSIIの誘発脳磁界についても評価していく必要性がある.さらに先行研究で,掌上の刺激呈示位置が変化すると知覚量が変化すると報告されているが,空気噴流を用いた実験ではないことから,空気噴流刺激を呈示した際の誘発脳磁界と知覚量を比較するために心理実験を行っていく必要性があると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた触覚ディスプレイの駆動プログラムを動作させることが出来たことにより,本年度の進行状況が高まった点があげられる.特に実際の二点弁別閾を検出する実験は次年度のデータ解析を当初計画していたのに対し,実験を上記プログラムにより進めることが出来た点が本年度の達成度に大きく貢献している.また,当初は予定していなかった心理実験のめども立ったこともおおむね順調に進展していると判断できる点である.
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