イネの発生における脂肪酸合成酵素遺伝子の機能を明らかにすることを目的とし、これまでに同定した3つの突然変異体と新たに同定した7系統の突然変異体の表現型を解析する。特に、表皮、オーキシン関連遺伝子の発現、脂肪酸組成に注目する。過剰発現体および二重突然変異体も作製し、同様な解析を行う。脂肪酸組成解析により共通して変化の見られた分子が生理活性に関わる重要な分子と考えられる。また、表皮に異常が見られた突然変異体と表皮の遺伝的除去実験により、表皮のシュート発生における重要性を明らかにし、そのようなイネでのオーキシン関連遺伝子発現パターンおよびオーキシン極性輸送タンパク質の局在の変化から、表皮に依存したシュート発生におけるオーキシンの役割を明らかにする。 今年度は、昨年度までに3番染色体の長腕に原因遺伝子がマッピングされた突然変異体の原因遺伝子の同定を行った。ファインマッピングを行った結果、この突然変異体では受容型プロテインキナーゼをコードする遺伝子に23塩基の欠失が見られ、この遺伝子(ONI4と命名)の突然変異体であることがわかった。また、oni4突然変異体は既知のoni1、oni2、oni3と同様な異常が観察され、表皮の分化異常や融合がみられた。これらのことから、イネの表皮の分化には脂肪酸だけでなく、細胞膜を介した情報伝達も関わっており、これらの相互作用が重要な可能性が新たに考えられた。 また、別の1系統のマッピングを進めたところ、1番染色体と12番染色体の2カ所に原因遺伝子がマップされた。マッピングに用いた突然変異体(日本晴由来)とカサラスの後代では15:1の比で突然変異体が現れるが、元々のヘテロ株での自家受粉では3:1の比で突然変異体が現れることから、この突然変異体は2遺伝子の突然変異体で、そのうち1遺伝子は元々日本晴で変異していると考えられた。
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