研究概要 |
西南暖地において,播種時期と生育初期に過剰水分を被りやすい水田転換畑で大納言系アズキを安定生産するために,通常より1ヶ月早い早期播種を試み,その際に問題となる蔓化と倒伏による減収を軽減するための開花期前の勢葉の効果を明らかにするため,4カ年の計画をスタートさせた.初年度は,畦高の異なる高畦区と中畦区を設定して圃場の土壌水分を制御し,アズキの大納言系4品種を生育させて応答反応の品種間差を明らかにした.その結果,能登大納言が比較的高い耐湿性を示した.大納言系アズキの産地である丹波地域で現地試験を行い,異なる播種時期として,6月15日から7月26日までの5回にわたり10日間隔で京都大納言を播種し,生育反応と収量を調査した.その際,6月15,25日,7月5日播きについては,8月24日に草高30cmを目処に茎葉部を刈取り,勇葉区とした.勢葉を行うか否かの生育の指標として,草高,主茎長,LAI,葉色値等を経時的に調査した.播種時期が早いほど,分枝数および総節数は高い値を示した.英数と総子実重には時期別の差異は認められなかった.また,いずれの播種時期においても勇葉区と対照区との問に英数と総子実重には差異が認められなかったが,倒伏程度は勢葉区で小さく,上位節葵数が高まる可能性が示された.この点はコンバイン収穫時の汚粒割合を軽減する効果があるかもしれない.雑草の発生消長をあわせて調査したところ,勇葉の有無による差異はみられなかった.なお,主要な雑草は,タカサブロウとヒロバフウリンホウズキであったが,一部帰化アサガオ類も見られた.申請時に初年度の計画としてあげたFRPポットを用いた異なる地下水位条件下での根系発育の検討については,小型ポットを用いた予備試験にとどまったが,ダイズにおける過剰水分に対する応答反応である胚軸根の旺盛な発達は,アズキでは認めらず,次年度にさらに詳しく調査する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
勢葉による分枝数,着英数,着英節位を詳細に把握するために,ポット栽培の孤立個体を供試して剪葉後の生育を評価する.また,圃場試験では道管液の相対ウレイド値を解析して,勢葉による窒素固定への影響について量的に把握する,試験圃場には丹波地域の現地圃場と本学附属フィールドを利用する.
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