研究課題/領域番号 |
24380024
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研究機関 | 公益財団法人岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
西原 昌宏 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 細胞工学研究部, 研究部長 (20390883)
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研究分担者 |
高橋 秀行 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 細胞工学研究部, 主任研究員 (00455247)
佐々木 伸大 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 細胞工学研究部, 主任研究員 (80422088)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 植物 / 遺伝子 / 花色 / フラボノイド / ゲノム / リンドウ / 転写因子 / トランスポゾン |
研究概要 |
リンドウの花色発色機構の解明を目指して研究を進めている。本年度は、次世代シークエンス解析により得られた配列の中から、ドメイン検索により新規MYB遺伝子を探索し、解析を行った。これまでリンドウで単離されていない花弁で発現する2遺伝子(GtMYB1R1, GtMYB1R9)に着目し、それぞれの全長cDNAを単離した。両遺伝子はSingle repeat R3 MYB転写因子遺伝子であり、シロイヌナズナのアントシアニン生合成抑制に関わる転写因子遺伝子(AtMYBL2)と高い相同性が認められた。酵母2-hybrid解析の結果、両タンパク質はGtbHLH1とタンパク質間相互作用を示すことが判明した。また、一過的発現解析により、両遺伝子はGtMYB3とGtbHLH1の共導入によるリンドウのジヒドロフラボノール4-還元酵素遺伝子(DFR)プロモーターの活性化を抑制した。さらに、両遺伝子を過剰発現するタバコを作出した結果、著しいアントシアニンの減少が認められ、花弁着色の抑制(白花化)が観察された。これら形質転換体ではカルコン異性化酵素(CHI)、DFR、アントシアニジン合成酵素(ANS)遺伝子の有意な発現抑制が認められた。以上の結果から、両遺伝子はリンドウ花弁においてアントシアニン生合成を負に制御する転写因子遺伝子であり、花弁の着色程度や色調を制御している可能性が示された。 シークエンス情報から配糖化酵素遺伝子を探索し、開始コドンを含んでいた cDNA 配列 8 種類について大腸菌タンパク質発現用コンストラクトを作成した。大腸菌組換え酵素を用いて配糖化酵素活性を検討したところ、 2 種類の組換え酵素が apigenin に対する配糖化酵素活性を有していた。現在、酵素特性の詳細な解析を行っている。 さらに、リンドウにおける新規トランスポゾン様配列の獲得、メタボローム解析を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シークエンスとバイオフィンフォマティックス手法を活用し、リンドウ花弁のトランスクリプトーム解析を行った。研究目的の一つであるリンドウ花弁で発現する遺伝子配列情報の取得について、計画通り達成されている。また、これまで未知であったリンドウ花色素生合成の発現制御機構について、解明を進め、4つのMYB転写制御因子遺伝子の機能解析を実施した。花で機能するP1タイプMYB遺伝子、発現抑制に関わるSingle repeat R3 MYBはこれまで他の植物種の花でも機能解析されておらず、学術的に意義が大きいものである。さらに、リンドウにおけるフラボンの構造解析、配糖化酵素遺伝子の単離も順調に進んでおり、最終年度までに機能解析を行う予定である。一方、トランスポゾンの解析については、自立型因子の単離には成功しておらず、今後、さらに他系統の解析を進める予定である。花弁のメタボローム解析についても順調に進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、リンドウ花色の生合成に関わる新規遺伝子の探索、色素構造の決定、トランスポゾンによる花色変異メカニズムの解明を続ける。リンドウの花弁におけるフラボン色素については、新規に分取HPLCを導入し、色素の分画、構造解析を迅速に進める。酵素遺伝子の機能解析を実施する。また、得られた配糖化酵素遺伝子の酵素諸特性の解析を行い、フラボン配糖化酵素の同定を行う。エゾリンドウ、ササリンドウにおける花弁のメタボロームの比較解析を実施する。さらに、花色変異体を用いて、原因解明、新規トランスポゾンの探索を行い、リンドウ属における花色発色機構を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
配糖化酵素遺伝子の単離に成功したが、詳細な酵素特性の解析は次年度行うことになったため。また、花色素成分の構造解析が必要であり、次年度に繰り越して使用する。 酵素活性の測定、花弁色素の精製、解析用に分取HPLC装置を導入し利用する。
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