研究課題
昨年度までの結果を総合して、キュウリモザイクウイルス(CMV)がシロイヌナズナCol-0に誘導する壊死病徴は、CMVの2bタンパク質(2b)と宿主のカタラーゼ3(Cat3)が複合体(2b-Cat3)を形成することに起因すると予想した。すなわち、2b-Cat3が宿主細胞に認識されて特異的な壊死反応が起きているものと考えられた。本年度は、CMV2bのC末端に特別なアミノ酸配列を付加したN2bを発現するCMV(CMV-N)が偶然に接種葉で強い壊死を起こすことを見いだしたため、このCMV-Nを使用した実験を行った。CMV-NをCat3ノックアウト植物に接種したところ壊死はむしろ抑制されることがわかった。また、N2bとCat3をアグロインフィルトレーションによってN. benthamianaの葉に共発現させたところ、wild typeの2b(Y2b)とCat3はすみやかに分解されていくのに対して、N2bとCat3は比較的安定に蓄積することが判明した。したがって、N2b-Cat3が安定に蓄積したときに強い壊死が誘導されることが示唆された。また、Cat3ノックアウト植物に蛍光タンパク質を発現するCMVを接種したところ、CMVは拡大しやすくなることが判明し、Cat3はCMVの移行を阻害する能力があるものと考えられた。3年間の研究結果から、シロイヌナズナのCat3は2bと複合体を形成することによって弱いながらCMV抵抗性を発揮していること、2b-Cat3複合体は宿主細胞に認識されて壊死を誘導することが明らかになった。この壊死誘導は、ウイルスに有利なのか、宿主に有利なのか未だ議論の余地があるものの、筆者は宿主の抵抗反応の1つと考えている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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