研究概要 |
PsyRとVfrの標的遺伝子を同定するため、両遺伝子にFLAGの配列を付加させたPsyR-FLAG菌、Vfr-FLAG菌を作出した。しかしながら、PsyR-FLAG菌はAHL合成能を失ったため、その後の実験には供試できなかった。その対策としてPsyRのペプチド抗体を作成したので、今後はこのペプチド抗体あるいは組換えPsyRに対する抗体を用いクロマチン免疫沈降法を実施する予定である。一方、Vfr-FLAG菌の表現型は野生株と大きな違いはなかったので、抗FLAG抗体を用いててクロマチン免疫沈降法を実施した。その後、DNAを精製し、次世代シークエンサーを用いて解読した。その結果、hrpRやflgMのプロモーターにピークが観察された。これらの配列はVfrの標的遺伝子の候補と言える。 菌体密度感知分子であるアシルホモセリンラクトン(AHL)の合成能を欠損、あるいは著しく低下したpsyI, psyR, aefR遺伝子の変異株で共通して転写活性が低下する遺伝子群(PSPPH_1609~1615)を見出した。marR遺伝子(PSPPH_1617)はそれらの遺伝子群の端に存在している。また、その遺伝子群の中にはAHL合成遺伝子(psyI, PSPPH_14)、AHL受容体転写因子遺伝子(psyR, PSPPH_1615)の他、5つのopen reading frame (ORF1~5, PSPPH_1609~1613)が存在し、その中のORF5はRieske (2Fe-2S)ドメイン含有タンパク質の遺伝子(orf5, PSPPH_1609)である。marR遺伝子の欠損変異株は、上述のorf5遺伝子の欠損変異株と同様、swarming能を欠損し、宿主タバコに対する病害力が低下した。さらに活性酸素や酸化窒素に対する耐性が低下した。これらの結果は、MarRとRieske (2Fe-2S)ドメイン含有タンパク質はともに病害力やストレス応答に必要とされることを示唆している。
|