研究課題/領域番号 |
24380029
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人農業生物資源研究所 |
研究代表者 |
石川 雅之 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物・微生物間相互作用研究ユニット, ユニット長 (70192482)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ウイルス / 植物 / RNA / 複製 / タンパク質 |
研究概要 |
我々は先行研究で、トマトモザイクウイルス(ToMV)の膜結合複製複合体の主な構成因子130K複製タンパク質が、ジスルフィド結合を介した高分子量複合体を形成すること、その高分子量複合体に含まれる130Kタンパク質のみがRNA複製に関連した酵素活性を獲得していることを見いだした。本研究の目的は、130Kタンパク質の高分子量化をもたらすジスルフィド結合の実体を解明し、それが複製複合体形成のどの段階で形成されるのか、さらに、ジスルフィド結合形成のToMVRNA複製複合体形成における役割は何かを明らかにすることである。平成24年度は、ToMVの1301(複製タンパク質中に存在する19個のシステイン残基のそれぞれをセリン残基に置換する変異を完全長ToMV cDNAに導入し、19種類の変異ウイルスRNAを作製した。これらの性質を試験管内ウイルスRNA翻訳・複製系を用いて解析し、3つの変異(C179S, C186S, C581S)がジスルフィド結合を介した複製タンパク質の高分子量化のみならず、 pre-membrane-targetingcomplex(PMTC)形成能、複製タンパク質の膜結合能、グアニリルトランスフェラーゼ活性およびRNA合成活性を喪失させることを明らかにした。一方、二本鎖small interfering RNA結合能はこれらの変異により影響を受けなかった。このことから、これらのシステイン残基がジスルフィド結合にかかわるとともに、複製複合体形成のごく初期に位置するPMTC形成において重要な役割を果たす可能性が示唆された。PMTC形成は還元剤存在下でも起きるので、当該システイン残基のPMTC形成段階における役割は、ジスルフィド結合形成ではなく、当該残基を介した相互作用を成立させることにあると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複製タンパク質中のシステイン残基をセリン残基に置換したToMV変異株19株の性質を明らかにし,ToMVRNA複製における複製タンパク質のジスルフィド結合形成による高分子量化の重要性を示す論文をまとめることができた。これは、概ね当初の予定通りの進展である。
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今後の研究の推進方策 |
ToMV複製タンパク質中のシステイン残基がジスルフィド結合にかかわるとともに、複製複合体形成のごく初期に位置するPMTC形成において役割を果たす可能性が示唆された。PMTC形成は還元剤存在下でも起きるので、当該システイン残基のPMTC形成段階における役割は、ジスルフィド結合形成ではなく当該残基を介した相互作用を成立させることにあると考えられた。このため、平成25年度はPMTC形成におけるシステイン残基の機能の解析に重点を置く。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、消耗品の節約等により次年度使用可能な予算を生じた。さらに、方針の若干の変更により、平成25年度に予定していた受託解析をペンディングにする可能性が出てきた。そこで、平成25年度には、より効率よく実験を進めるためのキット類の購入や、研究支援者の雇用の可能性も考慮したい。
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