研究課題
基盤研究(B)
1.アワノメイガでは、これまでに10個の嗅覚受容体(フェロモン受容体)が同定されている。しかしながらこれらの受容体はカイコのフェロモン受容体との相同性に基づくdegenerate PCRにより発見されたものであり、アワノメイガには他にもフェロモン受容体遺伝子が存在する可能性がある。またフェロモン以外の一般的なにおいに対応する嗅覚受容体については全く知られていない。そこで今年度はアワノメイガにおける新規受容体遺伝子の獲得のため、ロシュ454 GS-Jrによる触角由来転写産物のRNA-seq解析を行った。その結果、嗅覚受容体遺伝子の候補となる29のコンティグを得た。これらの中にはすでに知られている10のフェロモン受容体のうち8つが含まれていた。定量的RT-PCRにより組織ごとの発現量を確認したところ、触角特異的に発現しているいくつかの新規受容体遺伝子候補を特定することができた。しかしながら、この解析ではほとんどのコンティグが転写物の全長をカバーできていないと考えられた。これを解決するためには使用する次世代シーケンサーの機種を変えてより多くのリードを得る必要がある。2.アゲハチョウ味覚感覚子において、電圧特性の異なる3種類の味覚ニューロンが同時に活動することが、産卵活性に必須であることを発見した。昆虫の化学感覚のしくみを理解する上で、重要な知見であると思われる。アゲハチョウ2種について、次世代型シーケンサーを用いてドラフトゲノムを構築し、RNA-seqとの組み合わせにより化学感覚受容体遺伝子と匂い物質結合蛋白質遺伝子をそれぞれ数十種類発見した。遺伝子探索は研究実施計画よりやや前倒しで進行している。
2: おおむね順調に進展している
新規受容体遺伝子の探索について、一定の成果を上げることができているため。
生態学的に活性のあるリガンドに対する応答を適切に観察するためには、正しい受容体を用いる必要がある。間違った受容体を用いることのないように、対象とする種におけるすべての受容体遺伝子のレパートリーを把握していることが重要である。次年度以降は新規受容体遺伝子の探索をより重点的に進めていく。
RNA-seq解析の対象とする組織が微量なため、次世代シーケンサーによる解析にかけるために必要な量を集めるのに時間がかかった。また、当初計画していたものとは異なる機種を用いることにしたため、プロトコルの対応にも手間取った。すでに必要な量のサンプルは集め終わっており、繰り越した経費についてはその解析に用いる予定である。
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Journal of Neuroscience
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