研究課題/領域番号 |
24380030
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松尾 隆嗣 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70301223)
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研究分担者 |
尾崎 克久 株式会社生命誌研究館, -, 研究員 (60396223)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | asdf |
研究概要 |
フェロモン受容体の探索(松尾):前年度に行ったロシュ社GS-Jrを用いたアワノメイガの触角RNAseq解析では、いくつかの新規受容体候補遺伝子を発見したものの、リード数が少ないためにすべての遺伝子について網羅できていない可能性が残った。また、多くの候補遺伝子について転写物配列の全長を得ることができなかった。今年度はイルミナ社のMiSEQを用いてより大規模にRNAseq解析を行い、オス・メス合わせて6つのサンプルから計12Mリードを得た。これらをアセンブルしてコンティグを得、主にカイコ嗅覚受容体との相同性に基づいたスクリーニングから53のアワノメイガ嗅覚受容体候補遺伝子を同定した。この中には、既報のフェロモン受容体遺伝子のほとんどが含まれていたが、一方でこれまで知られていなかった受容体遺伝子も多数存在した。すべての候補遺伝子について、RT-PCRによる発現解析により触角での転写物の量を測定し、RNAseq解析での各コンティグへのリードマッピング結果と照らし合わせたところ、両者は大変良く一致した。 産卵刺激物質受容体の探索(尾崎):アゲハチョウ類では近縁種間で産卵する食草が異なっており、それぞれの種で産卵刺激物質として機能する化合物が異なることが知られている。今年度はナミアゲハの前肢符節で発現している味覚受容体・OBP遺伝子群を網羅的に同定した。フェロモン受容体に比べて味覚受容体遺伝子の構造は多様性が高く、RNA-seqを中心とした新規遺伝子探索では、ひとつの遺伝子が複数のcontigに分断されるなどいくつかの問題が生じ、全長配列を取得することが困難であったが、プロトコールの工夫によって問題を克服し、候補遺伝子の完全長と思われる配列を検出できた。また、ゲノム配列の解析もプロトコールの工夫によってcontigサイズの改善に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嗅覚・味覚受容体およびOBP遺伝子の探索について、計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
フェロモン受容体の解析(松尾):受容体遺伝子探索は順調に進んでいるが、今後は機能解析を進めなければならない。当初は培養細胞を用いたin vitroでのアッセイ系を改良することで、生体内の機能をより正しく反映する結果を得ることを目指していた。しかし、人工ヌクレアーゼを用いたゲノム編集技術がここ数年の間に目覚ましい進歩を遂げ、非モデル生物でも遺伝子ノックアウト実験を行うことが可能になってきた。これを受け、フェロモン受容体の機能解析についてもゲノム編集を利用した手法を開発することにしたい。すなわち、TALENを用いてフェロモン受容体遺伝子を破壊したアワノメイガの突然変異体系統を作成し、各種化合物に対する神経生理学的、および行動学的な応答を評価することで受容体の機能を明らかにする。このような手法はこれまでモデル生物でのみ可能であったが、受容体の機能をもっとも正しく評価することができるようになると期待される。 産卵刺激物質受容体の解析(尾崎):NGSを用いた新規化学感覚受容体遺伝子探索に特有の問題を克服し、候補遺伝子の検出をハイスループット化することに成功した。大規模に種間比較を行うための準備が整いつつあるので、数種アゲハチョウから遺伝子を検出したいと考えている。現状では、従来型の手作業による確認実験で機能解析を行っているので、発見した候補遺伝子の機能解析についてもハイスループット化できるよう工夫に取り組みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
フェロモン受容体の探索(松尾):イルミナ社MiSEQを用いたRNAseq解析について、当初は外部に業務委託により行う計画でいたところ、研究分担者の所属する組織にこの装置が導入され、これを用いて実験を行ったので、必要な費用が大幅に低減された。 産卵刺激物質受容体の探索(尾崎):MiSeqの光源軸がずれるという故障が発生し、修理完了まで約一ヶ月間使用できない期間があったため、シークエンスのラン回数が予定より減少した。 フェロモン受容体の解析(松尾):TALENによる遺伝子破壊に使用するDNAコンストラクトをカスタム合成サービスによる業務委託により作成するために用いる。 産卵刺激物質受容体の解析(尾崎):当初の計画通り、MiSEQによるシークエンスに用いる。
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