研究課題
環境温度情報の受容から休眠ホルモン (DH) 放出に繋がる分子・神経ネットワーク機構の解析を行ない、概念的に仮定した環境情報の保存・記憶の分子実体の解明を目指した。そのために、[A] DH 放出に関わる分子機構の解析、[B] 休眠誘導関連遺伝子の網羅的スクリーニングを行なった。[A] ではまず、DH をコードする遺伝子 (DH-PBAN) および DH 受容体遺伝子 (DHR) のノックアウト (KO) 系統を作出し、次世代卵の休眠性におよぼす影響を調査した。DH-PBAN の KO 系統では血液中に DH は全く検出されなかった。そして、2化性系統におけるこれらの遺伝子の KO 系統では、母蛾をいかなる環境条件に曝しても次世代卵は非休眠卵となった。これらの結果から、胚期および幼虫期に受けたさまざまな環境情報は DH と DHR から構成される DH シグナル経路に統合され、これが唯一の経路として休眠性の決定がなされると結論づけられた。次に、蛹期の DH の放出制御機構の解析を行なった。まず、脳の外科的手術により DH の放出が脳の特定の部位からの神経支配により制御されていることを確認した。次に、DH-PBAN の KO 系統を用いた解析により、GABA 性神経伝達とある種の脳ペプチドが休眠誘導に関わり、それらが DH の上位で作用し、DH の放出制御に関わることを明らかにした。次に [B] では、これまでに RNA-seq. 解析により、休眠誘導関連候補遺伝子を複数同定している。リアルタイム PCR 解析により、2化性のカイコの母蛾の胚期や脳ー食道下神経節において休眠性の違いによる発現量の違いを発育過程を追って調査し、RNA-seq. 解析の結果を確認できる遺伝子を同定した。さらに、これらの遺伝子の内、興味深い遺伝子に関してゲノム編集技術を利用して KO 系統の作出を行なった。現在、表現型の解析を行なっている。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Sci. Rep.
巻: 5 ページ: 15566
10.1038/srep15566.
蚕糸・昆虫バイオテック
巻: 84 ページ: 119-126