研究課題/領域番号 |
24380039
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
山本 洋子 岡山大学, その他部局等, 教授 (50166831)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルコール発酵 / アルミニウム / 活性酸素種 / 好気呼吸 / タバコ培養細胞株 / 乳酸発酵 / ミトコンドリア |
研究概要 |
アルミニウム(Al)イオンは多くの植物種においてROS生成を促進することが知られている。タバコ培養細胞株SL(野生株)でも同様であり、SLより選抜したAl耐性細胞株は、ROS生成の強い抑制が特徴である。両株の代謝物の網羅的解析の結果、Al耐性株ではミトコンドリアのTCA回路が抑制され乳酸発酵が促進されている可能性が示唆されていた。これを検証するために、両株を用い、解糖系の最終産物であるピルビン酸が、乳酸発酵・エタノール発酵・TCA回路の三方向へ分かれる代謝の分岐点で各々を触媒する鍵酵素の比活性を比較した。その結果、野生株と比較して、Al耐性株では構成的に乳酸脱水素酵素の比活性が高く、逆にピルビン酸脱水素酵素の比活性は低いこと、一方、ピルビン酸脱カルボキシル酵素ならびにアルコール脱水素酵素の比活性は、ともにAlで誘導されAl耐性株でより高く誘導されることを見出した。さらに、乳酸脱水素酵素の阻害剤を培地に添加し、増殖阻害効果を調べたところ、Al耐性株でより強く阻害された。以上の結果より、糖代謝経路において、Al耐性株は、乳酸発酵やエタノール発酵への依存度を高め、一方、TCA回路を抑制することでミトコンドリアでの電子伝達に伴うROS生成を抑制している可能性が示唆された。 平成24年度に予定していた両株を用いた遺伝子発現のマイクロアレイ解析は、平成25年度に繰り越した。原因は、本解析に必要な懸濁培養系を再度樹立しなければならなくなり、それに長時間を要したことにある。平成25年度の後半に入りようやく増殖状態が安定したことから、両株を用いたマイクロアレイ解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、材料としてタバコ培養細胞株を用いることが特徴であるが、培養室に汚水が流れ込んだことが原因で、懸濁培養として実験に供していた株が使用出来なくなり、計画の一部を平成25年度に繰り越した。この問題については、固型状態(カルス培養)で維持していた株を懸濁培養に移し、数ヶ月継代培養を繰り返すことで懸濁培養系を再構築し、さらに継代培養を続けることで平成25年度後半に入ってようやく安定した増殖状態になり解決した。一方、上記の株が使えない期間に、計画には無かったが、別系統のタバコ培養細胞株を用いて、Alが誘発する細胞死の解析を行なったところ、新規機構を見出すことが出来た。以上、総合的に判断し、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、タバコ培養細胞株(野生株、Al耐性株)の比較解析により、新規のAl耐性機構の解明を目的とする。次年度は、カルスより再調製した懸濁培養系を用い、以下の解析を行う。 (1)タバコ培養細胞株(野生株、Al耐性株)を用いた代謝物・代謝酵素の比較解析(昨年度からの継続)と遺伝子発現の網羅的比較解析。 (2)糖代謝変動に関わる遺伝子の発現ならびに機能解析 (1)の結果に基づき、特に、糖代謝に着目して、Al耐性に関わることが予想される遺伝子について発現ならびに機能解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、解析対象のタバコ培養細胞株が汚水で汚染されたため、固形培地で維持していた細胞からあらためて液体培養系を調製することが必要になった。そこで、計画していたタバコ培養細胞株を用いたマイクロアレイ解析が出来なくなり、これを次年度の繰り越し課題とするとともに、マイクロアレイ解析のための経費(700000円)を繰り越すこととした。 タバコ培養細胞株(野生株、Al耐性株)の懸濁培養細胞系を樹立する。増殖速度が安定した段階で両者のアルミニウム感受性を確認するとともに、両者で発現している遺伝子の違いを網羅的に解析するためにマイクロアレイ解析を行う。繰り越し金は、マイクロアレイ解析を行うための経費として用いるが、その際、受託サービスもしくは所属部局内の機器を利用して行う。
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