研究課題/領域番号 |
24380041
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高谷 直樹 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50282322)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糸状菌 / 代謝 / 酸化還元 |
研究概要 |
これまでに、申請者は、酸素欠乏下で酸素の代わりとして利用可能な様々な細胞外電子受容体を検索し、それまでに報告してきた硝酸塩・亜硝酸塩に加えて、一酸化窒素、鉄イオン(Fe3+)、フミン酸などの環境中に広く分布する不・難溶性化合物が糸状菌Aspergillus nidulansの電子受容体となりうることを発見した。また、元素状硫黄の還元がポリスルフィドを解した細胞外電子シャトルによる元素状硫黄の解毒の生理的意義を持つことを示した。しかし、このときの細胞内での代謝変化については未解明であった。そこで、本年度までに、細胞外電子シャトルと細胞内レッドクス恒常性の維持機構の解明に焦点を絞った研究を展開した。また、新たに見出したFe3+とフミン酸への細胞外電子シャトル機構の構成成分を同定するとともに、フミン酸の代謝能が強かったAspergillus nidulansを用いて,糸状菌によるフミン酸代謝の分子機構を解明することを試みた。最少液体培地にA. nidulansの分生子を添加して12時間振とう培養した後、これに0.1%フミン酸を添加し,さらに3~24時間培養した菌体から全RNAを抽出し,DNAマイクロアレイ解析を行った。遺伝子発現パターンによるクラスター解析の結果,フミン酸の添加後に伴い発現が上昇するクラスターには,カルボン酸,有機質,脂肪酸(GO No. 46395,1901575,6631)の代謝遺伝子が多く見られた。また、芳香族の分解に関わるFlavin-containing monooxygenaseおよびCytochrome P450遺伝子群のうち、それぞれAN10582、AN7522の発現が上昇しており、これらがフミン酸の代謝になんらかの機能を有すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の研究の成果によって、現存の真核生物であるカビが有する細胞外電子伝達系が多様であることが明らかとできた。またこの機構をもつことおよびそのエネルギー維持(呼吸、異化)系としての意義の考察が可能となった点は、基礎科学として意義が大きい。また、研究の過程で、細胞内酸化還元反応に伴って生じるラジカル分子の解毒と耐性化が、糸状菌の細胞外電子伝達に重要であること判明し、特に一酸化窒素解毒という新たな研究へと展開した。これらを総合的に評価し、(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
以下を主な課題として推進する。 ・フミン酸の還元については、A. nidulansが細胞外のフミン酸に応答して変化させる細胞内代謝についての網羅的な解析を引き続き行う。本代謝に関わる遺伝子を予想し、その組み換え酵素の調製と遺伝子破壊株の作製と解析をとおして、それら遺伝子のフミン酸代謝への寄与を特定する。 ・新たに見出された一酸化窒素耐性化代謝については、耐性化遺伝子の特定と機能の解析をすすめる。具体的には、それら遺伝子の発現パターンの追跡、遺伝子破壊株の作製と解析をとおして、それら遺伝子の機能を分子レベルで明らかにする。
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