研究実績の概要 |
本年度は、一酸化窒素(NO)耐性遺伝子に関する研究を精力的に進め、まとめた。具体的には、25,000株の形質転換体から取得した31のNO耐性化クローンについて、プラスミドのインサート領域に導入された遺伝子を同定した。各遺伝子の高発現株の作製とNO耐性の検定を通して、NO耐性に寄与する遺伝子としてnapA、proC、rbgB、riboBを特定した。proC、rbgB、riboBのNO耐性機能は初めての発見であった。 引き続き、proC/rbgBが関わるNO耐性機構についての解析を進めた。まず、Saccharomyces cerevisiaeのプロリンの生合成に関わるPRO3のオルソログであるproCに注目した。NO供与体の存在下での生育は、proC高発現株で野生株より強く、プロリンを生合成できないproA変異株では野生株より弱かった。また、培地中にプロリンを添加することで、野生株、proC高発現株、proA変異株のすべてでNO条件下での生育が強くなった。さらに、NaNO2を培地に添加した時の細胞内プロリン量は、NaNO2濃度依存的に減少することが明らかになった。他のアミノ酸の多くについてもNO濃度依存的な細胞内濃度の低下が見られた。これらの結果から、細胞内アミノ酸量を低下させアミノ酸飢餓を誘導するというNOの新たな毒性メカニズムが明らかとなった。
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