研究課題/領域番号 |
24380043
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野尻 秀昭 東京大学, 生物生産工学研究センター, 教授 (90272468)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プラスミド / 染色体 / 遺伝子発現 / 転写調節 / 核様体 |
研究概要 |
本研究では、カルバゾール分解プラスミドpCAR1を材料に、その存在がどの様に宿主染色体上の多数の遺伝子の転写変動を引き起こすのか、また種々培養条件での生育量をどの様に変化させるのかについて解明することで、“プラスミドを持つ”というシグナルが転写制御を経て染色体機能を制御する機構を解明する。また、これらの現象の少なくとも一部には、pCAR1上の複数の核様体タンパク質(NAPs)が関与することも示唆されているため、主要な役割が予想されるNAPsの機能構造解析と、他のNAPs間での相互作用解析を行うことで、上記シグナル伝達経路でのNAPsの機能メカニズムを解明する。 平成25年度は、pCAR1保持がP. putida特異的に浸透圧ストレス耐性を低下させる機構解明を目指し、ショットガンクローニングによる耐性回復変異株のスクリーニングを継続すると共に、既知の浸透圧ストレス耐性機構の関与などの評価を開始した。また、DNAサンプリング法によるpCAR1上の宿主特異的に転写変動する遺伝子のプロモータ領域に結合する因子の同定に向けて、必要なプラスミドの作成をほぼ終了した。NAPs機能の解析については、pCAR1にコードされるMvaT様因子であるPmrとP. putida染色体由来ホモログTurA, TurB間でのヘテロ二量体形成能について調べ、ヘテロ二量体のなりやすさにホモログ間で違いがあることが明らかになった。さらに、改変ChIP-chip実験の結果の詳細な解析から、PmrとTurBの各結合領域はほとんど同じながらも一部の連続塩基の存在頻度に明確な傾向の違いがあることが示された。現在、この結果の実験的証明を目指して、BIA-COREによる親和力の生化学的計測を試みている。Pmrとホモログの結晶構造解析については、多量体形成能が低下したTurB変異体で結晶が得られる条件を決定できたので、さらに良好な結晶の取得を目指し条件検討を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAサンプリング法によるプロモータ結合タンパク質の同定と、浸透圧ストレス変化のメカニズム解明は計画より若干遅れているが、核様体タンパク質のDNA結合領域の好みの違いやヘテロ二量体化・多量体化に関する研究は予想以上のペースで結果が出てきている。全体としては、予想よりも若干早く研究が進捗していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では、遅れ気味の課題に新たに大学院生を付け、一層の研究推進を図る。そのほかの研究実施体制は昨年度と同じであるため、全体としての研究体制はより強力な形で進められるものと考えられる。 研究全体の進みの中でも、核様体タンパク質のタンパク質としての機能解析は予想以上に解析が進み、従来の予想を覆す実験的成果が出つつある。このままのペースで研究を進めると共に、最終年度である平成26年度ではこの成果の論文執筆につなげたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
浸透圧耐性の変化メカニズムの解明とDNAサンプリング実験が少し遅れ気味のため、実験に必要なキット購入を差し控えた。このため、若干、予算が繰り越される形になった。 遅れ気味の実験は平成26年度当初にすぐ開始予定であるため、順次、平成26年度分予算と合わせて4月から使用していく計画である。
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