研究課題
微生物学では細菌をコロニーとして純粋分離することが基本技術であり、生きた細菌もコロニー形成能で定義してきた。しかし近年、環境中の多数の細菌がコロニー形成できないことが認識されるようになり、コロニー形成は生きている以上の特別な現象であることが明白となったが、我々はその違いを知らず、コロニー分離法は細菌資源を手に入れる最大の障壁となっている。我々はコロニー形成を遺伝子発現に基づく生物現象と捉え、多くの細菌が環境中でコロニー形成しにくい現象のモデルとして,コロニー形成できない大腸菌変異株を分離した。その変異株において脂肪酸合成酵素FabBの欠失で脂肪酸の外部供給が不十分になると、液体培養に比べても固体培養が強く阻害されコロニー形成不全に陥ることを示した。しかし自然界の細菌はfabB変異体ではなく、大腸菌野生型も脂肪酸添加なしに成育するため、野生株の挙動がこれで説明できるかどうかが問題となる。まず、(1)野生株でfabB遺伝子の発現だけ抑えた時にも液体培養より固体培養の方でより強い増殖不良が起こった。次いで,(2)FabBを阻害する抗生物質セルレニンを野生株に半致死量加えた時、液体より固体培養の方でより強い増殖阻害が起こった。同様の現象は枯草菌でも観察され、脂肪酸供給不足で液体培養に比べコロニー形成が阻害される現象を一般化できた。さらに,(3)対数期の大腸菌に脂肪酸要求性はないが、飢餓でコロニー形成能が低下すると部分的要求性が現れ、脂肪酸供給不全となることでコロニー形成能が低下することが示唆された。以上から、一般に脂肪酸不足がコロニー形成低下の原因となっている可能性を指摘し,実際,土壌抽出液によるコロニー形成効率が,脂肪酸の添加で増加することを示した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Microbiology
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