研究課題/領域番号 |
24380047
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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研究分担者 |
川本 純 京都大学, 化学研究所, 助教(Research Associate) (90511238)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞膜 / 脂質 / タンパク質 / 高度不飽和脂肪酸 / エイコサペンタエン酸 / リン脂質 |
研究概要 |
(1) 高度不飽和脂肪酸の一種であるエイコサペンタエン酸 (EPA) を含有するリン脂質を細胞膜成分として含む細菌 Shewanella livingstonensis Ac10 において、EPA 含有リン脂質が膜タンパク質のコンフォメーションにおよぼす影響を解析した。その結果、本菌の主要外膜タンパク質である Omp74 のコンフォメーションが、野生株と EPA 欠損株で異なり、本タンパク質のペプチドグリカン結合部位のプロテアーゼ感受性が、EPA の有無により異なることが見いだされた。 (2) EPA の細胞内での挙動を解析するツールとして、EPA のω末端にエチニル基(炭素-炭素三重結合をもつ官能基)を導入したプローブ分子 eEPA を有機化学的手法により合成した。エチニル基は特徴的なラマンシグナルを持つため、eEPA をラマン顕微鏡で可視化できることが期待される。また、エチニル基はアジド基をもつ化合物と特異的に結合させることが可能であるため、そして、エチニル基やアジド基は一般に生体分子には含まれないため、eEPA を含む生体分子(eEPA で修飾されたタンパク質や脂質など)をアジド基を含む蛍光試薬によって特異的に検出したり、アジドビオチンと結合させたあとでアフィニティー精製することが可能になるものと期待される。 (3) ω末端にエチニル基を導入したオレイン酸アナログ eOLA を有機化学的手法によって合成し、これをリン脂質分子に導入した。得られた eOLA 含有リン脂質を種々の濃度で含むリポソームを調製し、ラマン顕微鏡観察に供した結果、10 mol% 以上の eOLA 含有リン脂質を含むリポソームがエチニル基特有のラマンシグナルによって可視化できることが示された。同様の手法で eEPA 含有リン脂質の可視化も可能になることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EPA 含有リン脂質と主要外膜タンパク質 Omp74 の相互作用解析に関しては大きな進展が見られ、また、EPA 含有リン脂質の細胞内挙動解析に有用なプローブ作製に関しては、期待以上の収率や収量で目的物を得ることができた。一方、EPA 含有リン脂質と細胞分裂関連タンパク質の相互作用解析に関しては、EPA 含有リン脂質によってどのような構造変化がタンパク質にもたらされるのか、という点について十分な情報が得られていないのが現状である。以上の状況から、「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
EPA 含有リン脂質と細胞分裂関連タンパク質の相互作用解析を重点的に行い、EPA 含有リン脂質によってもたらされるタンパク質の構造変化の詳細を明らかにすることを目指す。また、作製したプローブ分子 (eEPA) を用いた EPA の細胞内挙動解析、特に局在性解析やタンパク質の修飾剤としての機能解析に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画していた研究のうち、EPA 含有リン脂質と細胞分裂関連タンパク質の相互作用解析について、培養条件の検討や膜画分調製法の検討に予想以上の時間を要したため、一部の実験を次年度に行うこととした。そのため、次年度使用額が生じた。 EPA 含有リン脂質と細胞分裂関連タンパク質の相互作用解析に必要なタンパク質解析用試薬や遺伝子工学用試薬などの消耗品の購入に使用する計画である。
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