研究課題/領域番号 |
24380048
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
原島 俊 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70116086)
|
研究分担者 |
金子 嘉信 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90161182)
前川 裕美 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (80399683)
杉山 峰崇 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (80379130)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 酵母 / ゲノム工学 / 染色体の部分重複 / 育種 |
研究概要 |
産業酵母では、異数性、特に部分重複が有用形質に関係することが明らかになってきた。こうした事実から、染色体の任意領域が重複した異数体を自在に作り出す技術は、これまでに、産業酵母の育種や、ゲノムの網羅的機能解析に有用と考えられる。しかし、いずれの生物種においても開発されていない。そこで、本研究では、出芽酵母における新規のゲノム工学技術として、任意の染色体領域を簡便に重複させる技術(PCDup法と命名)の開発と応用を目指す。 PcDup法では、まず、i)重複させる領域の両端400bp程度を相同組換え標的部位として、それぞれPCRで増幅する。次に、ii)オーバーラップPCRにより、2つの標的断片のそれぞれと、別途増幅した選択マーカー、CEN4、テロメアシード配列を持つ断片を融合する。iii)調製した2種類のPCR断片を用いて酵母の形質転換を行う。本年度は、様々な染色体上の50kb~150kbの重複に成功した。さらに長い領域が重複できるか否かについて試みた結果、300kbまでの長さについては重複体を得ることができた。次に、本技術を有用菌株の育種やゲノムの機能解析へ応用するため、染色体全領域にわたり200kbずつ重複染色体を保持する重複株タイリングシリーズの作製を試みた。これまでに、XV番、VII番、XII番、XI番、V番染色体について目的とする重複株を得ることができた。続いて、得られた重複株について育種に重要な表現型の解析を行った。その結果、高温、酸への耐性変化が見られる重複株もあった。それらの領域内にある遺伝子の単独過剰発現では、そうした表現型は報告されていない。従って、こうした表現型の変化は重複領域内の複数の遺伝子が同時に増幅されたことに起因すると予想された。これらの結果より、PCDup法は、育種への応用だけでなく、ゲノム機能の解析技術としても有用であることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発を目指した新しいゲノム工学技術(PCDup法)が期待通りに有効に機能したため。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従い、全ゲノムに渡る染色体部分領域重複株の構築を完成する。これが完成すれば、全ての重複株の表現型をできるだけ多く調べる。表現型の変化が見られたものについては、また、これと平行して、「染色体複数部位のワンステップ同時分断技術の開発」を目指す。このため、PCDup法に、CRSPR-Cas9システムを導入し、その有効性を検討する。
|