研究概要 |
病原菌に高い特異性を示す、安全かつ持続的な代替農薬・防除技術の開発が強く望まれている。その有力候補として、青枯病菌特異的ジャンボバクテリオファージ(RSL1)の利用に着目した。この特殊なファージについて(1)制菌時における宿主菌の生理的変化(運動性、多糖生産、病原性、増殖性等)、(2)制菌時に高発現する12個のファージ遺伝子の個々の発現特性、宿主への影響、(3)制菌時に宿主菌に検出されるプラスミド様因子(検出済)の由来と構造、宿主への影響、(4)宿主菌の一般ファージ耐性機構とファージの耐性解除機構等を実験計画に従って明らかにする。これにより、ジャンボファージ(未知な部分が多い)と宿主菌の相互作用に関する学術的新知見を得て、持続的な病原菌の制圧モデルとして特徴付ける事を目的とした。当初計画に従い、(1)制菌時における宿主菌のtwitching運動性の低下、病原性の低下を明らかにした。また、(2)制菌時に高発現する12個のファージ遺伝子のうちorf105, orf106, orf121, orf133, orf134, orf137, orf209を宿主菌内で高発現させ、前3者が増殖促進効果、後2者(特にorf137)が増殖抑制効果を示す事を見いだした。さらに、(3)制菌時に宿主菌に検出されるプラスミド様因子が溶原化RSSファージの誘導に由来する事を見いだした。RSS原型ファージは宿主菌病原遺伝子(phcA, phcB, hrpB,egl,pilTetc)の抑制制御を行うことが判明し、ファージによる青枯病原菌制圧の重要な機構の一環が明らかとなった。EZ-Tn5^<TM><KAN-2>Tnp Transposome^<TM> Kitによるトランスポゾン変異株のうち3種がRSL1耐性を示した。何れもLPS合成系の変異株であり,耐性と同時に病原性を失っていた。
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