研究概要 |
青枯病菌特異的ジャンボファージRSL1(未知な部分が多い)と宿主菌の相互作用に関する学術的新知見を得て、持続的な病原菌の制圧モデルとして特徴付けることを目的とした。当初計画に従い以下の成果を得た。(1)制菌時に高発現する12個の遺伝子をプラスミドpRSS-TGに結合し、lacプロモータ下流で発現させた結果、orf105, orf106, orf121が宿主菌の増殖を促進し、orf137, orf209が増殖抑制した。(2)共存状態で誘導されるプラスミド様因子が溶原化RSSファージ由来であることが判明し、塩基配列決定によりプラスミド切り出し部位(attL/attR:attB)が宿主dif部位である事を確定した。これにより、RSSファージの宿主組込み機構がXerC,D系による事が明らかとなった。(3)RSL1のh-変異株(耐性株にsuper infective)をUV照射法,ニトロソグアニジン処理によって試み,いくつかの候補を得たが、容易に戻り変異をすることが判明した。この機構に興味が持たれる。(4)EZ-Tn5TM<Kan-2>Tnp Transposome TMKitを用いたノックアウトライブラリーを作成し、3種の耐性変異株を得た。いずれもLPS合成系に変異点を有し、RSL1の宿主吸着性が大きく低下していた。このことからLPSがRSL1受容体として作用し、LPS構造変化が耐性機構の一つであると判明した。ファージ側因子特定のため粒子高次構造解析を行った。頭部は少なくとも5種のタンパク質から成り,尾部はT4のものと似ておりVI型分泌装置との密接な関係を示した。ファージ共存状態で繊維状RSSファージが誘導され、宿主菌の病原性遺伝子phcA, phcB, hrpB, egl, pilT etc.の発現が一斉に抑制されていた。RSSファージにコードされた転写抑制因子ORF13によるものと思われる。
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