研究課題/領域番号 |
24380050
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中山 二郎 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40217930)
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研究分担者 |
五十嵐 康弘 富山県立大学, 工学部, 教授 (20285159)
永田 宏次 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30280788)
清水 徹 金沢大学, 医学系, 教授 (80235655)
鈴木 崇 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (70398048)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | クオラムセンシング / グラム陽性日和見感染菌 / 阻害剤スクリーニング / ペプチドデザイン / アンタゴニスト / デプシペプチド / ゼラチナーゼ |
研究概要 |
菌の増殖には影響を及ぼさず、病原性の発現のみを特異的に抑制すると期待されるクオラムセンシング(QS)阻害剤は、薬剤耐性菌の蔓延が問題視されている腸球菌やブドウ球菌のポスト抗生物質として注目される。これらのグラム陽性病原細菌では、環状ペプチドを自己誘導因子“クォルモン”とするQSにより、病原因子の発現を調節している。本研究は、天然物のハイスループットスクリーニング(HTS)およびドラッグデザインにより、この環状ペプチドをクォルモンとするQSの阻害剤を創製し、腸球菌、ブドウ球菌、ウェルシュ菌の病原性発現を特異的に抑制する新しいタイプの抗感染症剤を創出することを目指している。 [1] 天然物・化合物ライブラリーからのQS阻害剤のHTS:約1000サンプルの放線菌および糸状菌抽出物を、ブドウ球菌と腸球菌のQS阻害を指標にスクリーニングした。その結果、約10のQS阻害物質を得た。興味深いことに、それらのうちの多くは、環状デプシペプチドであった。そのクォルモン分子との構造類似性からこれらの環状デプシペプチドは、クォルモンの受容体アンタゴニストであると示唆される。 [2] ウェルシュ菌クォルモンアンタゴニストの創製 :これまでに、腸球菌のクォルモンGBAPの構造を鋳型としたアンタゴニストZBzl-YAA5911の創製に成功している。今年度は、ガス壊疽病の原因菌であるウェルシュ菌のクォルモンペプチドのアンタゴニスト創製に着手した。これまでに約10のクォルモンペプチドアナログの合成が終了した。そのうち一つが、ウェルシュ菌のQSを実際に阻害することを確認している。 [3]クォルモン受容体の結晶構造解析:腸球菌のクォルモン(GBAP)受容体FsrCの結晶化条件を検討し、GBAP-FsrC複合体の結晶構造回折像を4.1オングストロームの解像度で得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、天然物化合物ライブラリーからのQS阻害剤のHTSについては、約1000サンプルのスクリーニングを終え、異なる構造で、また種々異なる作用機構を有すると思われる化合物を10程度得ることができた。スクリーニングについては、十分な目標が達成されたと考え、今後は、これらの化合物の作用機構の解析に注力したいと考えている。 クォルモンアンタゴニストの創製については、本年度から新たにウェルシュ菌を標的としたクォルモンペプチドのアンタゴニスト創製に着手した。そして、アンタゴニスト活性を示すものをひとつ得るに至っている。 クォルモン受容体の結晶構造解析も着々と解像度を高めていっており、最終年度である26年度には、原子レベルでの座標情報を得るに十分な3オングストロームの回折像を得ることができると期待される。 一方、当初予定していた、動物実験については積極的な研究を展開できなかった。平成26年度は積極的に行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、天然物化合物ライブラリーからのQS阻害剤のHTSについては、約1000サンプルのスクリーニングを終え、異なる構造で、また種々異なる作用機構を有すると思われる化合物を10程度得ることができた。スクリーニングについては、十分な目標が達成されたと考え、今後は、これらの化合物の作用機構の解析に注力したいと考えている。 クォルモンアンタゴニストの創製については、本年度から新たにウェルシュ菌を標的としたクォルモンペプチドのアンタゴニスト創製に着手した。そして、アンタゴニスト活性を示すものをひとつ得るに至っている。今後は、さらに多くのアンタゴニストを合成し、コンピューターシュミレーション等も導入しながら、それらの構造活性相関情報からのアンタゴニストデザインも展開し、より活性の高いアンタゴニストの創製を目指す。 クォルモン受容体の結晶構造解析も着々と解像度を高めていっており、最終年度である26年度には、3オングストロームレベルの回折像を得ることに努め、原子レベルでの座標情報を得て、受容体の精密構造情報、とくにリガンド結合部位の精密構造情報を得て、アンタゴニストのデザインにも活かしていきたいと考えている。 そして、以上から得られた、天然物QS阻害剤や合成品のin vivoでの活性評価を動物実験にて行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
動物実験によるQS阻害剤試験を行わなかったことから、動物実験に供するためにようするペプチドアンタゴニストの大量合成および天然物QS阻害剤の大量精製を行わなかった。 平成26年度に、ペプチドアンタゴニストの大量合成および天然物QS阻害剤の大量精製を行い、動物実験によるQS阻害効果の評価を行う。
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