研究課題/領域番号 |
24380055
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金谷 茂則 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30273585)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サチライシン / セリンプロテアーゼ / 超好熱菌 / プリオン分解 / クチナーゼ / 成熟化 / X線結晶構造解析 / 菌体外漏出 |
研究概要 |
(1)LC-cutinaseの結晶構造解析と基質結合部位の同定:LC-cutinaseの結晶構造を1.5Åの分解能で決定した。その結果、LC-cutinaseは、10本のαヘリックスと分子中央部の1枚の大きなβシートを形成する9本のβ鎖から成ること、分子内にジスルフィド結合(Cys275-Cys292)を一つもつことを明らかにした。また、Ser165、Asp210、His242が活性部位を、Tyr95、Phe125、Tyr127、Met166、Trp190、Phe243が基質結合部位を形成することを明らかにした。 (2)LC-cutinaseの大腸菌菌体外漏出機構の解析:LC-cutinaseの大腸菌菌体外への漏出に必要な領域を同定する目的で、N末端領域を欠失させた3種類の変異体LCC(58-293)、LCC(68-293)、LCC(83-293)を構築し、菌体外漏出を解析した。その結果、LCC(58-293)とLCC(68-293)は菌体外に漏出するが、LCC(83-293)は菌体外に漏出しないことを明らかにした。従って、β2鎖が菌体外漏出に必要であることが示唆された。 (3)効率の良いTk-subtilisinの成熟化法の開発:プロペプチドドメインに変異を導入した2つのPro-Tk-subtilisin変異体(F17H、L69P)がいずれも野生型酵素より速く成熟化することを明らかにした。また、これらの変異体の成熟化速度が向上したのは、L69Pの場合はプロペプチドの阻害活性の低下により、F17Hの場合はプロペプチドの安定性の低下により、プロペプチドが分解されやすくなったためであることを明らかにした。 (4)Tk-SPによる異常プリオン分解:Tk-SPの生産量の向上を目的として、Pro-Tk-SPとそのプロペプチド(ProN)の共発現系を構築した。しかし、ProNは不溶性タンパク質として菌体内に蓄積するため、Pro-Tk-SPの成熟化を抑制することはできず、その生産量を向上させることはできなかった。一方、プリオン病に感染したマウスの脳から異常プリオンタンパク質を抽出し、Tk-SPによる分解をウエスタンブロッティング法により解析することにより、Tk-subtilisin同様、Tk-SPも異常プリオンを分解することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標としていた、1)LC-cutinaseの結晶構造解析、2)LC-cutinaseの大腸菌菌体外漏出領域の同定、3)Tk-subtilisinの成熟化速度の向上、4)Tk-SPの大量生産、5)Tk-SPによる異常プリオンの分解、のうち、1)、3)、5)についてはほぼ完全に目的を達成したため。また、2)と4)についても、来年度中に目的を達成できる目途がついたため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、LC-cutinaseの高活性化と安定化、漏出シグナルの同定(限定化)、Tk-subtilisinの高機能化を検討する。Tk-SPの大量生産に関しては、プロペプチドの可溶性タンパク質としての発現とPro-Tk-SPとの共発現不溶性融合タンパク質としての発現と再構成、などを検討する。また新たに、Tk-SPのキレート剤に対する安定〓や、Tk-subtilisinやTk-SPによる異常プリオンタンパク質分解機構の解析に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を推進するために基金助成金で特任研究員を1名雇用している。雇用は初年度10月に開始したが、優れた研究成果を得るためにはこの特任研究員をできるだけ長期間継続して雇用することが望ましい。従って、次年度に繰り越した初年度の基金助成金の一部は、次年度の基金助成金と合わせて、現在雇用している特任研究員の次年度の雇用や旅費に充当する。また次年度の補助金は、初年度同様、物品費や旅費に充当する。
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