研究課題/領域番号 |
24380056
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
川向 誠 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (70186138)
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研究分担者 |
戒能 智宏 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (90541706)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コエンザイムQ / ユビキノン / ミトコンドリア / 酵母 / 電子伝達系 / イソプレノイド / 抗酸化物資 |
研究概要 |
本研究は、酵母におけるコエンザイムQ(ユビキノン)生合成の全容解明とその知見をヒトの遺伝病の理解に貢献させようとするものである。コエンザイムQは生体内において電子伝達系の必須成分としてエネルギ生産に関わるが、生合成経路が完全には解明されていない。人間はコエンザイムQを合成するが、酵母は、ヒトの相同遺伝子を有していることから、酵母内での合成経路をまず明らかにし、その知見をヒトのみならず植物も含め、真核生物の基本的代謝経路としてのCoQ生合成の全容解明へと発展させることを目的としている。本年度においては、CoQ合成の全容解明に向けた研究を進めるため、分裂酵母のCoQを合成できない変異体において、前駆物質の探索を行なった。特に、coq5破壊株において、前駆体が蓄積することをLC-MS解析により見いだし、分裂酵母において、pABAとPHBの両方を初発物質とした経路が存在することが明らかになってきた。Coq5はメチルトランスフェラーゼとして、キノン骨格の修飾に関わる酵素であることから、両反応の中間に位置すると考えている。次に、ヒトやアラビドプシスで知られているCoQ合成に関わる遺伝子を、分裂酵母内で発現させ機能的な相補性を調べた。その結果、多くの場合、機能的な相補性を確認することができたが、COQ9遺伝子だけは、相補性を示さなかった。その理由ははっきりとしないが、線虫などではCOQ9遺伝子が存在しないことから生物種に特有の反応を担っていると考えている。CoQに結合するタンパク質の解析を進めた。CoQ結合タンパク質Coq10の結合部位の同定の研究を進めたところ、結合部位の推定ができた。その部位の変異体を作成したところ、結合活性が著しくて以下したことから、CoQの結合に重要なアミノ酸残基が同定できた。これらの結果から、CoQ生合成経路の新たな因子の発見ができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)CoQ合成の全容解明に向けた研究を進めるため、比較的経路がはっきりとしている大腸菌の解析結果を最大限に利用して調べることを目的として研究を行なった。分裂酵母のcoq5破壊株において、前駆体が蓄積することをLC-MS解析により見いだし、分裂酵母において、pABAとPHBの両方を初発物質とした経路が存在することが明らかになってきた。このように順調に研究は進展している。 2)分裂酵母内で、他の生物種特に、ヒトやアラビドプシスで知られている遺伝子を発現させ機能的な相補性を調べることを目的として研究を行なった。その結果、多くの場合、機能的な相補性を確認することができ、研究は順調に進展している。 3)各酵素の反応産物の同定を行なうことを目的として実験を行なったが、タンパク質の大量生産にまでは、いたらなかった。この点に関しては、計画どうりに研究は進展しなかった。 4)CoQ結合タンパク質の解析を進めることを目的として研究を行なった。CoQ結合タンパク質Coq10の変異体の作成と結合部位の同定の研究を進めたところ、結合部位の推定ができ、予想よりはよい結果が得られ、研究は予想以上に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
コエンザイムQ生合成の全容解明に向けた研究を進めるため、これまでに進めてきた研究を4つの方向でさらに推進していく。第一に分裂酵母のCoQを合成できない株を利用し、その株で蓄積してくる前駆体の解析をさらに進めていく。特に分裂酵母のcoq5破壊株において、2つの前駆体が蓄積することをLC-MS解析により見いだしたことから、この化合物の同定を目指していく。これまでにcoq5破壊株において蓄積する2つの前駆体の分子質量は推定できたが、これらの化合物が何かは不明であることから、さらにMS/MS解析や同位体を用いた解析を進めていく。第2に分裂酵母内で、他の生物種で知られている遺伝子を発現させ機能的な相補性をさらに検討してく、特にヒト由来の酵素遺伝子の変異体を酵母内で発現させその機能を調べる実験を進めていく。ヒトの遺伝病において、COQ2変異が見いだされていることからその変異体の影響を調べていく。あるいは、一種類の遺伝子だけで機能しない場合があるので、2種類の遺伝子を同時発現させる実験を検討していく。第3に分裂酵母の破壊株ライブラリーを活用し、CoQを合成できないあるいは合成能力が低下している株のスクリーニングを行なっていく。その際、合成に直接関与する遺伝子の発見を目指すと同時に、CoQ合成の制御に関わる遺伝子が見いだされてくることも期待できる。見いだされた遺伝子はどのうように関連するかを生化学的、遺伝学的手法、メタボロミック解析を駆使して、さらに解析する。第4にCoQ結合タンパク質の解析を進める。CoQ結合タンパク質は、大腸菌からヒトまで保存されているタンパク質であることから、その機能は非常に重要であると考えている。そこでこのタンパク質の機能を変異体解析を進めることによって、結合能力への影響、呼吸鎖への影響、酵素活性の変動などを調べていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね予定どおり経費を使用したが、一部残金がでた。 残金は、本年度消耗品費として使用していく予定にしている。
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