研究課題/領域番号 |
24380062
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉田 久美 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (90210690)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | アジサイ / アルミニウム輸送 / アントシアニン / 花色変異 / 単一細胞分析 |
研究概要 |
アジサイ(Hydrangea macrophylla)は日本原産で原種の花は青色である。アジサイのガク片は、酸性土壌で育てると青色となり、アルカリ性土壌では赤色になる。酸性土壌では、土壌中に3番目に多く含まれる元素のアルミニウムが水溶性になる。そして、根から吸収されたアルミニウムイオンがガク片の着色細胞の液胞内で、アントシアニンと錯体を形成し美しい青色を発色する。ただし、一般的にアルミニウムイオンは植物にとって毒であり、酸性土壌では根に障害がおきる。アジサイは酸性土壌に耐性を持つ植物で、植物体内に多量のアルミニウムを貯めることも知られていた。しかし、アルミニウムが液胞内へ運ばれる仕組みは全くわかっておらず、探索の手がかりも無かった。 昨年度に引き続き、青色アジサイガク片から作成して得たcDNAライブラリの塩基配列を解読し、マイクロアレイ実験とコンピュータ解析により、輸送体タンパク質の特徴を持つ遺伝子を候補として絞り込んだものの中から、アルミニウムの輸送活性を測定した。新たに、アニオンパーミエースに相同性を持つ細胞膜型アルミニウム輸送体(HmPALT2)を取得したので、本遺伝子の発現解析、翻訳産物であるタンパク質の局在解析、および酵母とシロイヌナズナを用いたアルミニウムの輸送機能解析と耐性に関する実験を行った。 HmPALT2は植物体全体での発現が認められ、一過的な発現解析により、その遺伝子産物は細胞膜に発現することが観察された。本遺伝子を導入した酵母およびシロイヌナズナは、アルミニウムにより感受性となることがわかった。一方、HmPALT2とHmVALTを同時に導入したシロイヌナズナは、再びアルミニウム耐性を獲得した。本遺伝子を導入した酵母による実験から、アルミニウム以外に、ニッケル、コバルト、鉄、カドミウム、ヒ素(III)の流入および亜鉛の排出能が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規Al輸送体を合計3種類取得し、それぞれについて、局在および機能解析を進めることができた。液胞型輸送体が植物においてAl耐性獲得に重要な機能を発揮することを明らかにした。さらに、挿し芽の初期にAl処理を行ったアジサイを開花まで育成中であり、この植物体を用いたAl輸送体関連遺伝子の発現解析を進めている。新規Al輸送体を取得し、機能解析を進めることができた。さらに、挿し芽の初期にAl処理を行ったアジサイを開花まで育成中であり、この植物体を用いたAl輸送体関連遺伝子の発現解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、挿し芽の初期にAl処理を行ったアジサイを開花まで育成中であり、この植物体を用いたAl輸送体関連遺伝子の発現解析を進めている。一方、HmVALTの大量発現系の構築を進めており、今後はこの輸送体の結晶化と構造解析を進める予定である。さらに、細胞質に局在するAl耐性に関与すると推測される新規タンパク質の遺伝子を取得した。今後、この機能解析を進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
アジサイのAl処理の有無によるAl耐性関連遺伝子の発現解析については、逐次ではなく、全ての試料がそろってからの解析に計画を変更したため、それに用いる予定の研究費について次年度使用額が生じた。 遺伝子発現解析に用いる試薬、器具等の購入に使用する。
|