研究課題
アジサイ(Hydrangea macrophylla)のガク片の色は液胞に含まれるアントシアニン、助色素とアルミニウムイオンの量比およびpHにより決定される。我々は既に、ガク片液胞へのAl集積と青色発色に関与する三種類のAl輸送体遺伝子(HmVALT、HmPALT1、HmPALT2)を取得し、液胞膜型のHmVALTが酸性土壌耐性に重要な役割を果たすことを報告した。しかしアジサイにおけるAl輸送と集積機構の全貌は未だ不明である。本研究は、アジサイにおける青色発色と酸性土壌耐性機構の解明を目的に、Al量の異なる土壌で栽培したアジサイの有機成分の組成、各組織のAl量ならびに三種類の輸送体の発現量を比較した。アジサイは通常の青色用土壌(-Al)とアルミニウム添加土壌(+Al)でさし芽からガク片が着色するまで約1年間育てた。経時的に組織を採取して実験に用いた。各組織のAl量はICPにより、有機成分はHPLCによりそれぞれ測定した。Al輸送体遺伝子の発現は定量的RT-PCRを用いた。+Alのアジサイのガク片は-Alに比べて明らかに青色になった。+Alのガク片のAl含有量は-Alのアジサイの2倍と有意に高かった。一方、有機成分(デルフィニジン3-グルコシド、5-O-カフェオイルキナ酸、5-O-p-クマロイルキナ酸、3-O-カフェオイルキナ酸)の組成には有意な差が見られなかった。Al輸送体遺伝子の発現解析の結果、さし芽から43日後、および108日後のステージ2、3の葉ではHmVALTは+Alで-Alよりも有意に高いことがわかった。これに対し着色したガク片(ステージ8)では-Alで増加、+Alで減少することがわかった。Al処理により生育の初期にAl輸送体の発現が誘導されることが示唆され、Alと接触することにより耐性遺伝子が誘導され、最終的に花色がより青くなる機構が推測される。今後は、輸送体タンパク質の定量および、遺伝子の誘導機構の解明を行う必要があると考える。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Tetrahedron
巻: 00 ページ: 00
10.1016/j.tet.2014.08.064
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10.1016/j.tet.2014.09.046
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http://www.info.human.nagoya-u.ac.jp/lab/yoshida/