研究課題/領域番号 |
24380063
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西川 俊夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90208158)
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研究分担者 |
中崎 敦夫 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (00366428)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インドールアルカロイド / 有機合成 / 連続環化反応 / セスペンドール / 光学活性体 / 不斉合成 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き(1)連続環化反応の開発とセスペンドール合成への応用と(2)セスペンドールの芳香環セグメントの光学活性体の合成を検討した。 (1)パラジウム触媒を使った連続環化反応の開発とセスペンドール合成への応用:昨年度までに開発した連続環化反応の基質一般性を調べる実験を行った。セスペンドールのベンゼン環に含まれる2種のプレニル基が一つ導入された基質では、収率よく連続環化反応が進行したが、セスペンドールと同じ2つの置換基が導入された基質では、低収率であった。触媒などの条件を再検討したが、大きな改善は見られなかった。なお、塩基として銀塩を使った際、連続環化反応が途中でとまった生成物が高収率で得られることが分かった。 (2)セスペンドールの芳香環セグメントの光学活性体の合成:昨年度、合成中間体のアリルアルコールのリパーゼによるアシル化とSharpless の不斉エポキシ化による速度論的分割を検討したが、反応がおそく、生成物の光学純度も不十分であった。そこで、今年度は、エノンの不斉エポキシ化、エノンの不斉1,2還元とSharpless の不斉ジヒドロキシル化を検討した。エノンの不斉エポキシ化をEndersらの方法によって行ったが、生成物の光学純度は28%eeと低く、エノンの不斉1,2還元を CBS還元剤で行ったが、オレフィンのヒドロホウ素化が優先し、ケトンの還元体がほとんど得られなかった。エノンのSharpless の不斉ジヒドロキシル化も反応せず、これまでのところ、セスペンドール合成に必要な光学活性な芳香環セグメントが得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)パラジウム触媒を使った連続環化反応の開発とセスペンドール合成への応用:パラジウム触媒による連続環化反応の収率が、天然物の構造に近い基質構造になるにつれ低下し、この問題を解決できていないことによる。基質の特殊な反応性を予測できなかった為である。 (2)セスペンドールの芳香環セグメントの光学活性体の合成:これまでの実験で、このセグメントの光学活性体合成に利用できると考えた既存の不斉合成反応のすべてが、この基質に利用できないことが分かった。この基質の構造が予想を越えて特殊な反応性を示すためであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)パラジウム触媒を使った連続環化反応の開発とセスペンドール合成への応用:今年度の研究で、銀塩を使うと連続環化反応は進行しないが、その途中で反応が止まった生成物が高収率で得られることが分かった。さらに、別の金属触媒の利用を検討するとともに、途中で環化反応が止まってできた生成物を使って段階的にC環を形成する方法も検討する。 (2)セスペンドールの芳香環セグメントの光学活性体の合成:有機触媒を使ったエノンの不斉エポキシ化と、アルデヒドに対するジビニル亜鉛の不斉付加反応による光学活性体の合成を検討する。もし、これらの方法でも良好な結果が得られなければ、芳香環部分に含まれる2つの不斉炭素を連続環化反応(BC環の形成)の後に導入するルートを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
セスペンドールの全合成の為には、両セグメントを光学活性体として調製する必要がある。しかし、両セグメントともに光学活性体調製が遅れたため、セスペンドール合成のための連続環化反応の基質が合成できなかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、遅れていた両セグメントの光学活性体の合成を行う。全合成には、両セグメントともに大量合成が必要であり、そのための原料、反応剤、精製用のカラムクロマト用充填剤などの消耗品費に当てる。
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