研究実績の概要 |
セスペンドールの両セグメントの光学活性体の合成を検討した。 (1)芳香環セグメントの光学活性体の合成: 昨年度までに、ラセミ体合成のルートを活用して、光学活性体の合成を試みてきたが、既存の方法では、どれも十分な光学純度の生成物を得ることができなかった。そこで今年度は、名古屋大学大学院工学研究科の大井貴史教授の研究室と共同で新規不斉酸化剤を使ったラセミアリルアルコールの速度論的分割を検討した。この反応剤は、セスペンドールが有するsynの立体化学のエポキシアルコールを優先的に与えたが、変換率が悪く生成物の光学純度も中程度にとどまった。以上の結果から、ラセミ体合成ルートの活用を断念し、全く新しいルートを提案した。 (2)テルペンセグメントの光学活性体の合成: 既に報告したラセミ体合成では、出発原料であるWieland-Mieschserケトンが十分高い光学純度で得るのが困難な上、合成工程数が20段階を越えているという問題点があった。そこで、Diels-Alder反応を利用する全く異なる合成法の開発を計画した。まず文献に従って、2,2-ジメチルシクロヘキサ-1,3-ジオンのパン酵母による不斉還元を利用してジエンを合成した。次いで、アセチレンジカルボン酸ジエステルとのDiels-Alder反応を検討した。アセチレンジカルボン酸ジエステルでは立体選択性は発現しなかったが、この親ジエンと合成的に等価なブロモマレイン酸無水物を使ってDiels-Alder反応を行ったところ、3:1という比較的高い立体選択性が発現した。脱臭化水素反応によってマレイン酸無水物構造を合成し、位置選択的にエポキシ化することで必要な3級水酸基導入のための手がかりを得た。今後、シクロプロパン経由のメチル基の導入とアルデヒドのアセチレンへの変換でセスキテルペンセグメントを合成する予定である。
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