研究実績の概要 |
本研究の目的はほ乳類の黄体ホルモンであるプロゲステロン(以下PROGと省略する)の植物における生理機能を追究するものである。トウモロコシのジャスモン酸欠損変異体tasselseed1(ts1と略)では、本来オス花である頂花がメス花化している(Acosta et al., Science, 323, 262-265,2009)。また同様な変異体のtasselseed2(ts2と略)はts1と同様にジャスモン酸合成酵素の1つをコードしていると報告されている。そこで内生JAをLC-MS/MSで調べたところ、ts1はジャスモン酸欠損であるがts2はジャスモン酸欠損ではなかった。また、当該酵素はΔ5-3βHSDと類似していることから、組替え大腸菌をつかって代謝実験を行なったところ、プレグネノロンがPROGに代謝された。したがって、本酵素はPROG合成酵素と思われる。本年度は本酵素の基質特異性を調べるために、本酵素の安定した調製方法を試みたが、成功に至らなかった。そのために、構造活性相関を行なうことができなかった。 一方、TS2遺伝子はTS1遺伝子の支配を受けていると考えられている。したがって、ts1およびts2変異体はジャスモン酸あるいはPROG処理によりその頂花が正常化するものと思われる。そこで、ts1変異体、ts2-N2491変異体、ts2-P1rr変異体をジャスモン酸ならびにPROG処理したが頂花の正常化は認められなかった。初年度ではts1変異体の正常化がジャスモン酸あるいはPROG処理によって見られたが、この現象を本年の実験で再現することはできなかった。今後、初年度と同じ実験方法を使って回復実験を追究する。
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