胎児期低タンパク質曝露が成長後の高血圧のリスクを高める機構を解析するため、妊娠中の低タンパク質食摂取が子のDNAメチル化にどのような影響を及ぼすかをゲノムワイドに解析した。SHRSPラットの妊娠中に通常食(20%カゼイン食)あるいは低タンパク質食(9%カゼイン食)を与え、子ラットを12週齢まで通常食で飼育した。昨年度には、これらラットの腎臓よりDNAを取得し、バイサルファイト処理を行ってゲノムワイドなメチル化解析のサンプルを得た。本年度は次世代シークエンサー(HiSeq2000)によるシークエンシングにより約60億リードの解析を行った。マッピングにはバイサルファイトシークエンス用のマッピングツールであるBismarckを、メチル化部位抽出にはBismarck(methylation extractor)を、メチロームデータの視覚化と解析にはSeqMonkを用いた。CpGの70%がメチル化されていた。各CpG islandをグループ(単位)として10367個所を解析したところ、メチル化度合いに群間で25%以上差があるCpG個所が9個所見出された。また、CpG island領域毎に統計的に解析(3400万個所)したところ、25%以上差が見られた個所が1025あり、その近傍に23の遺伝子が見出された。血圧制御に関連する遺伝子としては、Prostaglandin E2 receptor EP1 subtype、代謝調節上重要な転写因子としてforkhead box protein O3などが含まれていた。これらのメチル化や遺伝子発現について、他の手法での確認を進めた。
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