ヒト腸上皮様細胞株(Caco-2およびHT-29)を96穴プレートあるいは多孔性膜上で培養し、ヒトロタウイルスKU株、サルロタウイルスSA11等を感染させた。トリプシン処理により活性化したロタウイルスを培養細胞(多孔性膜上で培養した場合には、頂端側かに)に添加し、一定時間培養して結合と内在化を促進し、その後1-2日間培養してウイルスを複製増殖させた。細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、蛍光抗体染色し、細胞内で増殖したロタウイルスおよび合成されたカプシドタンパク質を蛍光マイクロプレートリーダーおよび蛍光顕微鏡を用いて蛍光シグナルとして解析した。添加したウイルス溶液の力価と蛍光マイクロプレートリーダーによる蛍光強度測定値とは相関しており、この実験系によりウイルス感染・増殖が判定量的に解析できることが確認できた。 貪食細胞に取込まれたβ-グルカン粒子が細胞内で非酵素的に分解されて再放出され周囲の腸管免疫系細胞と腸上皮細胞に作用しウイルス抵抗性を増強する可能性を追究するために、β-グルカン粒子を取込ませた貪食細胞を培養し、その培養上清(慣化培地)に含まれるサイトカインを測定した。その結果、数種のサイトカイン分泌が、β-グルカン粒子の取込みにより上昇することが明らかとなった。この結果は、研究開始当初に想定した、β-グルカンを取込んだ腸管の貪食細胞がサイトカインを分泌し、それらが腸上皮細胞に作用して粘膜上皮の腸管ウイルス抵抗性を増強するという作業仮説を支持するものであった。
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