研究課題/領域番号 |
24380078
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹中 千里 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40240808)
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研究分担者 |
富岡 利恵 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (40456588)
福山 泰治郎 信州大学, 農学部, 助教 (60462511)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射性セシウム / 上方輸送 / リター / 微生物 |
研究概要 |
福島第一原子力発電所事故で大量に沈着した放射性セシウムの森林生態系における動態の中で、硬質土壌からリター層へ移動する上方輸送に焦点をあて、微生物を介した直接的な輸送過程について、その制御要因を明らかにするとともに、福島の森林における年間フラックスを求めることを目的としている。 今年度は、昨年に引き続き福島県郡山市福島林業研究センター内のスギ人工林と広葉樹林におけるリターバック実験を継続して行っている。実験の結果,137Cs濃度の初期値はスギ林・広葉樹林でそれぞれ1 Bq kg-1,11 Bq kg-1であったが,その後増加し続け,278日後にはそれぞれ7,426 Bq kg-1,1,967 Bq kg-1に増加した。放射性セシウム濃度上昇の一因として,分解により試料量が減少し続けていることから,微生物活動が関与した可能性が考えられた。しかし、地表からのセシウム輸送を遮断した遮断区の放射性セシウム濃度は,無処理区と同程度まで増加しており,同位体比(137Cs/134Cs)も無処理区と同様の値であった。したがって,リターの放射性セシウム濃度上昇には,微生物活動に加え,放射性セシウムを含んだ土壌粒子やリターが雨滴による飛散等でリターバッグに混入するプロセスが,重要な役割を果たしていることが示唆された。 間接輸送に関わるフィールド実験として福島県林業研究センターの圃場に植栽したヒサカキ、ツバキ、チャ、スギ、モミジイチゴ、アカマツの苗木の葉における137Csの濃度を追跡測定している。2012年11月に採取した各樹種の葉試料からは137Csが検出されていなかったのに対し、今年度はスギで最大300Bq/kgの濃度が検出され、経根吸収は確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現場のデータから微生物による上方輸送を示すものとならなかったことから、実験条件の設定ができず、昨年度実施する予定であった室内実験を始めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、福島県林業研究センターでのリターバック実験の経過を観測していく。現状では地上からの土壌粒子等としての混入が大きいため、その影響を最小限にする工夫(上部を覆う等)を加えて移行の変化を調べていく。最終年度であるため、解析に向けての観測データの確認と追加観測を行う。 植栽した苗木について、一部の苗木について、根からの掘り起しを行い、全体としてセシウム吸収量を算出し、年あたりのフラックス計算ができるようにする。また、根系の観察を菌根菌観察も含めて綿密に行い、経根吸収の大小と菌根菌感染率との関係を明らかにしていく。 培養実験については、室内実験から現場でのポット実験に方針を変え、福島県林業研究センターの土壌を詰めたポットの表面への輸送について測定を行うこととする。最後に簡単なモデルとして知見をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
室内培養実験が実施できなかったため、そこで使用する物品の購入費用が次年度に回されたこととなった。 次年度は、室内培養実験の代わりに福島県林業研究センター内でポット実験をすることとしたため、ポットの購入費用に充てることとした。
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