研究課題/領域番号 |
24380080
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
檀浦 正子 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (90444570)
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研究分担者 |
小南 裕志 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (70353688)
高橋 けんし 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (10303596)
植松 千代美 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (30232789)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 森林炭素循環 / 炭素安定同位体 / パルスラベリング / 樹種間比較 / 光合成分配 |
研究概要 |
気候変動や林分の変化による長期的な変動予測のためには、それぞれの成り立ちを理解し、因果関係を考慮した解析およびモデルの確立が求められる。そのため、光合成によって13CO2を樹体にとりこませ、光合成で固定された炭素が呼吸として放出されるまでの樹体内炭素移動速度を実測することを試みた。 昨年度は、7月10日に富士吉田試験地におけるアカマツ(樹高約20.5m)において、炭素安定同位体パルスラベリングを適用した。事前に対象樹木の周りに鉄パイプで足場を組み、樹幹にアクセスできるようにした。ラベリング用チャンバーを足場を利用し樹体に設置したのち、密閉して13CO2(99.9%)を吸入し、チャンバー内の13CO2が光合成によってほぼ樹体に固定された後チャンバーを開封した。ラベリング後の13CO2の移動を追跡し、その移動速度をチャンバー間で観測により実測するために、幹・根に設置したチャンバーから呼吸として放出されるCO2中の13CO2の割合を二酸化炭素安定同位体アナライザー(Picarro Inc., CA USA, G2101-iおよびEnviroSence-2050)で測定した。アカマツでは、2012年度の計測で得られた炭素移動速度(秋季に0.11-0.23、冬季に0.04-0.21 m h-1)と比較して、夏季には約0.2m h-1(0.19-0.24 m h-1)と早いことが確認された。 これらの結果は、2013年5月の国際学会(COST)同じく5月のJpGU、11月の根研究学会、12月のAGU、2014年3月の生態学会および森林学会で発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、炭素の流れを追跡するのに効果的な方法である炭素安定同位体を用いたラベリングを数樹種に適用し、常緑樹と落葉樹における光合成産物の樹体内の分配量やその速度の評価をおこなうとともに、ラベリングを行った樹木の篩部組織の切片をサンプリングし、顕微鏡観察により組織の違いを明らかにすることが目的である。昨年度は夏季に富士吉田市見地においてアカマツを対象としてラベリングを行うことに成功したが、秋季に森林総研関西支所でミズナラとマテバシイを対象としたラベリングを予定通り行うことができなかった。原因は波長スキャンキャビティリングダウン方式二酸化炭素安定同位体アナライザー(Picarro Inc., CA USA, G2101-i)の故障である。アナライザーは業者に依頼して調整を行い、最終年度にラベリングを持ち越すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は昨年度準備段階でアナライザーの故障によりできなかった苗畑でのラベリングを予定している。森林総合研究所関西支所において、落葉広葉樹であるミズナラと、常緑広葉樹であるマテバシイ各3本ずつをサンプル木とする。可能であれば常緑針葉樹であるヒノキを加える予定である。ラベリングは夏季を予定している。二酸化炭素安定同位体アナライザー(Picarro Inc., CA USA, G2101-i)を設置し、葉・枝・幹・根・土壌から放出される二酸化炭素を分析する。予定通り師部の顕微鏡観察も行う。炭素移動速度を師部の構造との比較を考慮に入れて解析する。 ラベリングが成功すれば、各部位のサンプリングを定期的に行い、粉末資料として同位体質量分析計で同位体比を計測する。それぞれの器官へと分配された炭素の量をコンパートモデルとして表現する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の経費と合わせてラベリングガスを購入するため。ガスは高圧ボンベに封入し1本当たり約30-50Lで購入する。1Lあたり約1万円であり、少量でも購入できるが、高圧ボンベには構造上約1Lの残量が残る。よってできるだけたくさんのガスをひとつのボンベに封入したほうがロスが少ない。残金で購入すると、8Lしか購入できず、10%以上のロスがでることになる。そのため次年度に回すこととした。 ラベリングガスを購入する。
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