研究実績の概要 |
気候変動や林分の変化による長期的な変動予測のためには、それぞれの成り立ちを理解し、因果関係を考慮した解析およびモデルの確立が求められる。そのため、光合成によって13CO2を樹体にとりこませ、光合成で固定された炭素が呼吸として放出されるまでの樹体内炭素移動速度を実測することを試みた。 平成26年度は、森林総合研究所関西支所において、落葉広葉樹であるコナラを対象に枝ラベリングを行った。葉を3時間おきにサンプリングし、質量分析計で炭素同位体比を測定し、獲得された炭素の大部分がおよそ4日で葉から非同化器官へと輸送される様子を示した。また、落葉広葉樹であるミズナラ3本と、常緑広葉樹であるマテバシイ2本を対象に、樹冠ラベリングを実施した。同位体比赤外分光計(Picarro Inc., CA USA, G2101-i)を現場に設置し、葉・枝・幹・根・土壌に設置した呼吸量チャンバーに接続し、放出される二酸化炭素を分析した。この2樹種に関しては炭素移動速度に大きな違いは見られなかった。 また平成24、25年度に行ったアカマツ高木のラベリング結果を解析し、炭素の放出パターンが季節によって大きく異なることを示した。生育期では獲得された炭素が比較的すみやかに下方に流れ、呼吸によって消費されていたが、冬季においては他の時期と大きく異なっており、春先に呼吸基質として使われていた。また葉・枝・幹のコンパートメントに分けた炭素タンクモデルを作成し、パルスラベリングによる同位体比変動のシミュレーションを行ったところ、幹上部の同位体比の変動を概ねよく再現することができた。
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