研究課題/領域番号 |
24380084
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
柴田 銃江 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, グループ長 (10343807)
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研究分担者 |
中静 透 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (00281105)
齊藤 正一 山形県立森林研究研修センター, 森林環境部, 研究主幹 (80502583)
上野 満 山形県立森林研究研修センター, 森林環境部, 研究員 (00502585)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナラ枯れ / 森林生態 / 食物網構造 / 森林保全 |
研究概要 |
様々な動物の餌資源であり、木質エネルギーとしても再評価されつつあるナラ類は、広葉樹二次林の生態系機能を支える基盤種である。近年、全国各地でナラ枯れが発生し、自然環境や生態系サービスの重大な劣化が危惧されるが、その実態を把握した例はほとんどない。そこで本研究では、森林の組成構造変化を基軸にして、ナラ枯れによる基盤種喪失が森林生物相や木材供給サービスに与える影響を明らかにする。 研究初年度にあたる今年度は、主な調査地域とした山形県でのこれまでの関連データをとりまとめ、その結果をもとにして今後の調査デザインを検討した。先行関連データの分析から、ナラ枯れによる森林構造の変化は、被害前のナラ類の優占度によって異なることが明らかになった。例えば、ミズナラが優占する被害林での高木層植被率は、未被害林の20%程度にまで減少した一方で、コナラ被害林では未被害林とさほど変わらず、多くても50%程度の減少にとどまっていた。これらの結果と亜高木層以下の組成構造の結果から、ナラ枯れ被害後のミズナラ林は相当長く林冠閉鎖しない状態が続くが、コナラ林では、ある程度修復されると予想された。また、ナラ枯れ立木は5年経過した頃から急速に倒伏するという結果から、生物生息微環境が数年のうちに急激に変化すると考えられた。そこで、ナラ枯れ後の遷移にしたがった生物反応を包括的に明らかにするため、調査の基本デザインとして、ナラ枯れ被害度(未被害、微害、激害)と被害経過年(直後、5年前後、10年後)を組み合わせたマトリックスを構成するように調査地を選定した。そして、そのうち5カ所において、樹木、昆虫、ネズミ類調査を試行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画どおり、先行関連データの取りまとめ結果を学術論文として発表するとともに、これらの結果を元にして本課題の調査デザインの基本構造をきめるところまで完了した。また、学術論文発表と並行して、その解説記事を東北地方の行政機関紙にも寄稿することで、地方林野行政・民間団体にむけて森林保全に関する最新情報を速やかに提供した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画どおり、初年度に構築した調査基本デザイン(ナラ枯れ被害度と被害経過年を組み合わせたマトリックス)にしたがって調査地を増やす。昨年度に試行した生物調査のデータから、森林食物構造上で重要な位置を示すと予想されるいくつかの生物群を観測対象として選定する。それら生物群の種組成や個体数、栄養段階の変化から、ナラ枯れに脆弱な森林の特性抽出、被害度による森林再生の可否、森林生態系変化にともなう様々な生態系サービス変化を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述した現地生物調査にあたって、昆虫トラップなどの調査器具、採取試料の分析・保管にかかる薬品および賃金、本課題参画者のそれぞれの所在地-現地間の出張旅費が必要となる。
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