研究課題/領域番号 |
24380085
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
永光 輝義 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 室長 (30353791)
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研究分担者 |
滝 久智 独立行政法人森林総合研究所, 森林昆虫研究領域, 主任研究員 (80598730)
菊池 賢 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 主任研究員 (10353658)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 森林生態 / 保護・保全 / 森林の断片化 / 交配様式 |
研究概要 |
木材生産をおこなう人工林地域で広葉樹林(保残帯)を残す効果を、おもにハナバチ類に送粉されるカスミザクラの結実と交配について解析した。 小川学術参考林を含む茨城県北部地域において、植生などの地理情報と現地調査に基づいて、保残帯の面積と配置が異なる12ヵ所の調査地を設置した。それぞれの調査地に設定したルート沿いのカスミザクラの開花木の位置と幹周囲を記録し、結実期に12母樹から枝を採集した。それらの枝の花序あたり果実数などを測定した。また、枝の葉と果実の種子の胚からDNAを抽出し、核SSRの9遺伝子座の遺伝子型を決定した。そして、母子の遺伝的多様性と近交係数、二親性近親交配、父性相関を推定した。また、それらの調査地の標高、周囲10または100haの広葉樹林率、開花木密度、胸高断面積合計、葉緑素計数値を記録した。 その結果、それらのカスミザクラ母樹は、遺伝的構造がほとんどなく、ひとつの任意交配集団とみなされた。母子の遺伝的多様性はほぼ同じで、近交係数は子が母より高かった。花序あたり果実数などと二親性近親交配に与える要因は、はっきりしなかった。一方、父性相関は開花木密度に依存し、密度が低下すると父性相関が高まり、花粉親数が減少したことがわかった。 これらの結果は、おもにハナバチ類に送粉される樹木の交配様式は、保残帯の面積や配置よりも、交配可能個体の密度に依存することを示唆している。さらに、結実成功に与える保残帯の効果も明瞭ではない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保残帯の面積と配置が異なる12か所の調査地を選定した。また、対象となるハナバチ媒樹木のうちカスミザクラについて母樹の選定が完了した。さらに、平成25年度に予定している母樹の種子生産と父性相関の推定について、予備調査を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に設定した調査地とカスミザクラ母樹について、結実と交配を計画通り解析する。また、ハナバチ類の採集と分析のため、予備調査を始める。
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次年度の研究費の使用計画 |
カスミザクラ母樹の種子生産と父性相関の推定を、果実の採取と母子のマイクロサテライト遺伝子型の用いて推定し、保残帯の面積と配置が結実と交配に与える効果を解明する。
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