研究課題/領域番号 |
24380090
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
船田 良 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20192734)
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研究分担者 |
梶田 真也 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40323753)
渡邊 宇外 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (70337707)
半 智史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40627709)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 二次木部 / 管状要素 / 細胞壁 / 細胞骨格 / 修飾構造 / 微小管 / アクチンフィラメント / 生体イメージング |
研究概要 |
本研究の主目的は、二次木部細胞の分化や細胞死過程を各種顕微鏡を駆使した生体イメージング技術により可視化し、再生可能な資源である木材の形成機構に関する新しい知見を得ることである。特に、厚い二次壁の堆積と有縁壁孔など複雑な修飾構造を形成する二次木部様細胞を、樹木の培養細胞から高頻度で直接誘導する新規モデル系を確立し、細胞骨格の配向や局在のリアルタイムでの連続的な解析を行うことを目的としている。 交雑ポプラの培養細胞を用い培地条件を検討したところ、細胞全体に厚い細胞壁を堆積し有縁壁孔を形成する管状要素が誘導された。さらに、培地に植物ホルモンであるブラシノステロイドを添加し、培養細胞に乾燥ストレスを与えたところ、管状要素の誘導率が向上した。培養細胞から二次木部様細胞を効率良く直接誘導できる条件が確立できたといえる。さらに、GFP-MAP4遺伝子を導入した交雑ポプラ培養細胞を作出し、細胞内の微小管の挙動を経時的に解析することが可能になった。分化中の細胞を共焦点レーザ走査顕微鏡を用いて連続的に観察したところ、二次壁の直下に局在する微小管の束が認められた。また、拡大や伸長中の仮道管や道管要素において、これまで将来的に有縁壁孔が形成される位置に表層微小管の消失が観察されているが、同様の表層微小管の消失が培養細胞においても観察された。微小管の局在の変化が細胞壁構造の形成制御機構に深く関与しているといえる。 また、針葉樹であるトガサワラの培養細胞から、培地に加えるオーキシンとサイトカイニンの混合比を検討したところ、より高度に分化した管状要素が誘導された。管状要素の中には、網目状に二次壁が堆積した一次木部様の細胞だけでなく、有縁壁孔や細胞全体に厚い細胞壁が堆積した二次木部様細胞も認められ、複雑な構造を有する管状要素の分化過程の解析に有効な、新しい誘導系を確立することができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究主目的は、培養細胞から直接二次木部様細胞を誘導するシステムの確立と微小管など細胞骨格を動的に解析することである。交雑ポプラおよびトガサワラの培養細胞から細胞全体に厚い細胞壁を堆積し有縁壁孔を有する管状要素が誘導された。また、乾燥処理により誘導率も向上した。さらに、GFP-MAP4導入培養細胞において微小管の配向変化を連続的に解析することができたことから、順調に研究が進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
二次木部様細胞への直接誘導系の効率の向上を行い、複雑な構造を有する細胞壁形成過程における細胞骨格の連続的な解析を単一細胞で行い、細胞壁形成機構の新たなモデルを作成する。さらに、誘導された管状要素の細胞壁に堆積するセルロースミクロフィブリルの配向や細胞壁成分を組織化学的に解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に投稿した論文の掲載が次年度(平成26年度)になり、論文投稿料や別刷り代が次年度の請求になったため、基金の一部が次年度の予算となった。 平成26年度も、得られた成果を国際学術誌により多く公開する予定であり、論文投稿料や別刷り代として使用する予定である。
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