研究課題/領域番号 |
24380095
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河本 晴雄 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (80224864)
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研究分担者 |
坂 志朗 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (50205697)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 木質科学 / バイオマス / 熱分解 / 分子機構 / セルロース / ヘミセルロース / リグニン / 相互作用 |
研究概要 |
木材の細胞壁は、セルロース微結晶をヘミセルロースとリグニンからなるマトリックスがとりまく多層構造をとる。また、セルロースも均質ではなく、微結晶間に結晶性の低い部分が存在するとともに、微結晶の繊維方向の一方に還元性末端が存在する。このようなことから、本研究では、まず、マトリックス中でのリグニンとヘミセルロースとの相互作用とセルロースの不均質性に着目した研究を個別に進め、これらの機構がある程度明らかになった時点で、マトリックスとセルロースとの総合作用を加味した熱分解機構について検討する。 本年度は、まず、リグニンとヘミセルロースよりなるマトリックスの熱分解機構に関する基礎研究として、リグニン2量体モデル化合物のラジカル連鎖機構における、水素引き抜きに対するプロパン側鎖Cα、Cβ、Cγの反応性についてその後のラジカル連鎖反応経路とともに検討した。その結果、C-H結合の結合解離エネルギーよりもラジカルのアクセスビリティが重要であり、よりアクセスビリティの高いCγ―Hが優先して反応することが明らかになった。本結果は、ポリマーである天然リグニンではこのような反応性の差がより明確に作用していることを示唆し、この観点からヘミセルロースとの相互作用を検討することが重要であることが示唆された。 セルロースの不均質性の影響に関するものとして、セルロースの熱分解により、比較的低温においてまずDP200程度にまで重合度が低下することが知られているが、その過程で還元性末端が生成することが明確に示された。また、還元性末端はセルロースの熱分解が顕著になる300℃より低温の160~230℃の温度域で熱分解反応を開始し、これによりセルロースが活性化されることが明らかになった。すなわち、セルロースは微結晶の外側から活性化されながら不均質に熱分解されることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、マトリックスにおけるリグニンとヘミセルロース間での相互作用及びマトリックスとセルロースとの相互作用を解明することで、木材の熱分解機構を分子レベルで解明しようとしているが、現在までに、リグニンとヘミセルロース間での相互作用の際にキーとなるリグニンサイドの熱分解分子機構がかなりのレベルにまで明らかになってきている。また、セルロースの不均質性に起因する熱分解機構についてもその具体的な分子機構を提案するに至っている。このように、研究目的の達成に向けて研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究の実施計画に沿って、研究を継続して進める。リグニンとヘミセルロースとの相互作用については、高分子リグニンモデルとヘミセルロースを用いた研究を進める。さらにセルロースとの相互作用へと研究を進める。なお、これらの研究において本科研費で導入した赤外線顕微鏡を効果的に使用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験の予定を少し変更したため、今年度に使用する額が少なくなったため。 実験の変更に対応したことにより生じた簡単な装置を試作するための経費として使用する予定。
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