研究課題
スギ(Cryptomeria japonica)は、我が国の主要な造林樹種となっている。一方で、枝葉や加工に伴う廃材など、スギ材の生産過程における未利用資源の有効活用が重要な課題である。未利用資源の付加価値の高い活用法として精油が注目されている。精油は植物中に含まれるテルペン類などの香気成分を抽出したものであり、心身のケアを目的として伝統的に利用されてきた。しかしながら、ヒトの心身に対する効果は十分に検証されていない。また、抽出部位によって成分が異なることが知られている。そこで本研究では、平成26年度は、スギ枝葉および材部から調製した2種類の精油を用いて、精油香気に対するヒトの生理心理応答と含有成分の比較を行った。供試精油を無臭の不揮発性油であるスクアランで希釈することで、主観的に異なる3つの濃度条件を設定した。香り提示装置を用いて香りを呈示し、被験者実験を行うとともに呈示空気の成分分析も行った。枝葉精油を用いた被験者実験では、脳波のΘ帯域などで実験群×時間の交互作用に有意差が認められ、香りの有無または濃度によって脳波の継時的変化パターンが異なることが示唆された。また、POMSの混乱の尺度では低濃度群でのみ課題後の得点が有意に低下していたことから、生理応答の違いが主観的にも現れている可能性がある。一方で、材部精油を用いた被験者実験では、α帯域で実験群×時間の交互作用に有意差が認められ、δ帯域で実験群の主効果に有意差が認められた。しかしながら、主観評価においては、実験群間の違いは認められなかった。枝葉精油及び材部精油を用いた被験者実験ではそれぞれ異なる生理・心理応答が観察された。このことから、枝葉精油と材部精油がヒトの心身に及ぼす影響に機能的な違いがあることが示唆された。これには呈示空気中の揮発性成分の質的・量的な違いが寄与していると考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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バイオサイエンスとインダストリー
巻: 72 ページ: 395-398