研究課題/領域番号 |
24380101
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
都木 靖彰 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (10212002)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 魚類コラーゲン / 鱗 / 配向 / SLRPs / dermatopontin / 生体修復材料 / 再生医療 |
研究概要 |
1. 遺伝子の発現抑制実験 (1) ゼブラフィッシュのdecorin (zdcn) およびosteoglysin (zocn) のフルクローニングを終了した。さらに,定量PCRによりzdcn, zognのmRNAが様々な組織で発現し,特に浮袋で発現が高いことを明らかにした。また,各種器官が分化する発生1~4日目に発現量が一時的に上昇することを確認した。zdcnではin situ hybridization により表皮細胞,網膜の神経節細胞および双極細胞,肝細胞,中脳視蓋,精原細胞,発達初期の卵母細胞,筋細胞でmRNA発現を認めた。(2) ゼブラフィッシュchhondroadherin (zchad) のORF部分クローニングを終え,定量PCRによる成魚各組織の発現解析おこない,浮袋で特に強い発現を認めた。(3) ゼブラフィッシュdermatopntin (zdpt) のモルフォリノノックダウン個体の病態解析から,zdptがコラーゲン原線維形成のみならず,筋形成,表皮形成,神経形成に関与することを明らかにした。これらの成果はdptがコラーゲン形成以外の機能を持つことを明らかにした世界初の成果である。 2. リコンビナントタンパク質を用いたin vitroコラーゲン線維化実験 リコンビナントキンギョdptが 12.5~50 ug/ml の範囲で濃度依存的にI型コラーゲンの原線維形成を促進すること,原線維を細くすること,原線維同士の集合阻害することを明らかにした。キンギョビグリカンの大腸菌での発現に成功した。 3. 免疫組織化学法を用いたSLRPsおよびdermatopontin分子の局在解析 作成したリコンビナントdptに対する特異抗体を作成し,ゼブラフィッシュを材料に光顕免疫組織化学をおこなった。その結果,表皮細胞,軟骨細胞,筋細胞,網膜の各神経細胞層等に分布を認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
デルマトポンチンの研究において,ゼブラフィッシュにおけるデルマトポンチンノックダウンに成功した。これは魚類で初めての研究となった。また,その病態を解析することにより,当初の仮説であるコラーゲン形成異常に加え,筋形成,表皮形成,神経形成など,これまでには哺乳類の研究でも報告されていない異常を発見した。これにより,デルマトポンチンの全く新しい機能を証明できる可能性が強まった。これは当初の予定を大きく超える成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
A. 遺伝子の発現抑制実験 ゼブラフィッシュにおけるその他SLRPs遺伝子のクローニングを続ける(現在ビグリカンのクローニング中)。また,クローニングおよび発現解析が終了したものに関しては随時ノックダウン実験に移行する。 B. リコンビナントタンパク質を用いたin vitroコラーゲン線維化実験 クローニングの終了したものから随時リコンビナント合成を進め,線維化実験をおこなう(現在ビグリカンおよびデコリンのリコンビナント作成中) C.免疫組織化学法を用いた組織内局在解析による機能推定 リコンビナントが合成できたものから随時特異抗体を作成し,免疫組織化学をおこなう。デルマトポンチンに関しては光顕レベルの局在解析が終了したので,電顕レベルの詳細な解析に移行する。 D.魚コラーゲンとリコンビナントタンパク質をハイブリッド化したマテリアルに対する細胞反応実験系 デルマトポンチンとコラーゲンのハイブリッド材料を合成し,細胞培養をおこなう。
|
次年度の研究費の使用計画 |
昨年度,失敗なく順調に研究が進展した関係で,予定していた試薬(モルフォリノオリゴ,クローニング用試薬類,定量PCR用試薬類等,これらはすべてキットとして市販されているものなので1キットが高額になる)の使用量が少なかったため,予算に余裕が生じた。一方で,このまま実験が順調に進めば,次年度には,高額試薬類を大量に使用することが必要になることが明らかになった(次年度における実験に関しては次項「使用計画」参照)。そこで昨年度後半には,無駄なく少量の試薬で実験を進めることにさらに努め,次年度に予算を繰り越して使用することとした。 昨年に引き続き遺伝子クローニング,定量PCR,モルフォリノノックダウン実験をおこなうとともに,リコンビナントタンパク質の合成と合成したタンパク質を用いた細胞培養実験をおこなうため,これらの実験に必要となる試薬類を中心に予算を使用する。特にモルフォリノノックダウンは,昨年からおこなっているデルマトポンチンに加えて新たにデコリンのノックダウンをおこなうため,モルフォリノオリゴの使用量が増加することが予想される。さらに,リコンビナント合成では昆虫細胞を用いた合成に挑戦するため,その培養などに必要となる試薬類が新たに必要となる。昨年度に繰り越した予算を十分に活かして,よい成果を挙げることを目標としている。
|