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2014 年度 実績報告書

行動計測・数理モデル・耳石化学分析によるクロマグロの分集団構造の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24380104
研究機関東京大学

研究代表者

北川 貴士  東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (50431804)

研究分担者 白井 厚太朗  東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (70463908)
伊藤 幸彦  東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (80345058)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードクロマグロ / 回遊 / 分集団 / 耳石 / 数理モデル / 小型記録計 / 酸素安定同位体 / 微量元素
研究実績の概要

今年度はクロマグロの回遊モデル構築のステップとして,比較的遊泳能力の小さい稚魚期,未成魚期を想定して,それぞれ拡張型キネシスモデル (Okunishi et al. 2012),ならびに環境要因から現実的な回遊パターンを導くため遺伝的アルゴリズムを組み込んだニューラルネットワークによる推定方法 (Okunishi et al. 2009)について検討を行った。拡張型キネシスモデルは探索範囲,探索回数が主要な制御要因であり,クロマグロの餌および環境探索行動がモデル構築のキー・パラメータであることが示唆された。一方,ニューラルネットワークによる推定には,最適解としての回遊パターンの他に,回遊を引き起こす外的(環境),内的要因の双方が重要であり,小型記録計(アーカイバルタグ)による環境と体温の情報を活用することで、モデル構築が進展することが期待された。小型記録計を本種の生態に取り付けて放流して分集団構造を調べる調査については,来年度の遂行に向け研究協力者と連携して準備を整えた。
耳石化学分析については,昨年度得られた微量元素組成(Li, Na, Mg, Mn, Cu, Zn, Rb, Sr, Ba)の結果をまとめた論文を現在作成中である。また,耳石のみならず脊椎骨のネオジム同位体比や筋肉中の水銀・有機汚染物質濃度が有用な回遊指標となる見込みが得られたため,来年度以降,これらを分析項目に加えるべく,分析に適当な試料を収集するための手段を整えた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

耳石化学分析については,酸素安定同位体に加え,微量元素組成についての有効性もある程度示された。耳石のみならず脊椎骨のネオジム同位体比や筋肉中の水銀・有機汚染物質濃度が有用な指標となる見込みも得られた。数理モデルについて,クロマグロの餌および環境探索行動がモデル構築のキー・パラメータであることが分かり,次年の最終年度への足掛かりを作った。不漁等で本種に記録計の装着・放流調査を行うことはできなかったが,近縁属魚類であるカツオの回遊データの解析を行い,本種と生態の比較を行うことができた。

今後の研究の推進方策

耳石化学分析については,微量元素(Li, Na, Mg, Mn, Cu, Zn, Rb, Sr, Ba)に加え,今後は新たに脊椎骨のネオジム同位体比の分析も行う予定でおり,集団構造判別の確度を高めていきたい。
本種未成魚に小型記録計を装着して放流する試験を8月に高知県沖で行う予定である。放流予定個体数は20個体である。再捕後,水温,水深,体温,経緯度データの解析を行い,分集団構造の把握を図る。記録計から得られたデータおよびすでに取得している分布データと照合しながらキネシス過程を核とした,魚種の生態に即した回遊モデルを本種に拡張する。
これら結果を纏めて最終報告とする。なお,本研究成果を含む,本種の生態研究の最新結果をまとめた洋書書籍(Science Publishers)を刊行する予定である。

次年度使用額が生じた理由

以下の理由で次年度に使用額が生じた。(1)耳石の酸素安定同位体分析のために必要な東部太平洋の本種標本の採集に関し,東京都中央卸売市場(築地)で入手する予定であったが,入荷時期が確実でなかったことから,購入には至らなかった。日本海生息個体の標本については入手手段を確立し,次年度に入手,分析することにした(2)小型記録計の本種生体への装着・放流調査は,事前調査を行ったものの,不漁等の問題で,実施には至らなかった。また使用予定の記録計に軽微な不具合もあったため,機器の改善を待ち,調査を次年度に行うことにした。(3)まとめていた論文の今年度中の投稿がかなわなかった。

次年度使用額の使用計画

耳石分析については酸素安定同位体・窒素安定同位体・微量元素に加え,ネオジム分析を新たに行うため,標本収集を引き続き行う。特に大型個体,日本海生息個体の標本を30個体程度集める。東京都中央卸売市場(築地)での標本購入の手配は,今年度に完了させた。
数理モデルについては,モデル構築のための諸費用(ハードおよびソフトウエア代,および計算作業のための雇用)に充てる。また,小型記録計を用いた行動生態調査を高知県沖太平洋で行う予定である。小型記録計の購入費,供試魚費,傭船費,調査地への交通費をはじめとした調査費用に充てる。
昨年に引き続き,研究成果についての国内・国際学会発表のための旅費,論文の投稿料にも充てる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 小型記録計・発信機を用いた魚類の行動・生理解析2014

    • 著者名/発表者名
      牧口祐也・青木良徳・北川貴士
    • 雑誌名

      比較生理生化学

      巻: 31 ページ: 113-118

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 微小領域分析法を用いた生物起源炭酸塩骨格の微量元素変動メカニズムに関する研究(2013年度日本地球化学会奨励賞受賞記念論文)2014

    • 著者名/発表者名
      白井厚太朗
    • 雑誌名

      地球化学

      巻: 48 ページ: 147-167

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] バイオロギングによる魚類の行動研究2015

    • 著者名/発表者名
      北川貴士
    • 学会等名
      平成27年度日本水産学会春季大会シンポジウム「魚類行動生理学の基礎と水産研究への応用」
    • 発表場所
      東京海洋大学(東京都港区)
    • 年月日
      2015-03-27 – 2015-03-31
    • 招待講演
  • [学会発表] 北西太平洋におけるカツオ(Katsuwonus pelamis)の北上に伴う獲得エネルギー量の変化2014

    • 著者名/発表者名
      青木良徳・北川貴士・岡本俊・松本隆之・清藤秀忠・宮原一・岡本浩明・小倉未基・河村知彦・渡邊良朗
    • 学会等名
      平成26年度日本水産学会秋季大会
    • 発表場所
      九州大学(福岡市東区)
    • 年月日
      2014-09-19 – 2014-09-22

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公開日: 2016-06-01  

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