研究課題/領域番号 |
24380109
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
阪倉 良孝 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 教授 (20325682)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水産学 / 行動学 / 生理活性 / マイクロアレイ / 脳・神経 |
研究概要 |
「トラフグのTTXセンシングは嗅覚である」ことを立証する行動実験を実施した。Y字迷路水槽の両端にアガロースゲルを置き,もう1基の水槽には迷路の両端にそれぞれTTX含有アガロースとそうでないアガロースゲルを置いた。これらの水槽に無毒のトラフグ人工種苗を入れたところ,トラフグがTTXに対して誘引され,これを取り込む行動(摂餌行動)を示した。一方,嗅覚を遮断したトラフグを同様に迷路に入れたところ,TTXに対して反応を示さなかった。このことから「トラフグのTTXセンシングが嗅覚であること」が確認できた。 上記行動実験で得られたTTXの無い環境(対照水槽)の個体と、TTXを感知して摂取する行動を示した個体について、それぞれ嗅神経と脳をサンプリングし、全RNAを抽出した後、cDNAを合成した。連携研究者の木下らの研究グループとともに、Ensembleトラフグゲノムデータベース(FUGU4.0)上にある転写産物の配列42、690個を抽出し、トラフグ用のDNAマイクロアレイを構築し,得られたcDNAを鋳型にCy3でラベルしたcRNAを転写し、上述のマイクロアレイにハイブリダイズして、各スポットのシグナルを調べた。TTX反応個体とそうでない個体についての嗅神経および脳のDNAの発現の差異についてクラスター解析を行い、TTXセンシングに関わる遺伝子の発現プロファイルを調べたところ,TTXに対して特異的に発現する遺伝子の候補が見つかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画にほぼ沿って順調に進行しているため上記評価とした。 マイクロアレイによる遺伝子解析では,飼育魚については必要十分な標本が得られているが,予備的解析として有毒天然魚の解析も視野に入れていた。天然稚魚がほとんど採れておらず,標本を採集することが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
実験2)TTXセンシングおよびTTX動態の責任遺伝子スクリーニング(続き) 実験1で得られたTTXセンシング個体と非センシング個体で、TTX感知に関する遺伝子を調べることは可能になるが、TTXを摂取・蓄積する過程での発現プロファイルを追うことが出来ない。そこで、無毒トラフグ人工種苗に対して、通常の飼料とTTX含有飼料を与える2群に分けて飼育をする。ここで、投与から1時間~1日間の間隔で5日程度の経時的なサンプリングを実施する。感覚神経および感知して摂取する行動を示した個体について、それぞれの個体の嗅神経と脳をサンプリングし、全RNAを抽出後にcDNAを合成し、トラフグDNAマイクロアレイによる発現解析を行う。 実験3)リアルタイムPCRによる責任遺伝子の脳内および感覚器官での発現状況 実験2によって予察されたフグのTTXセンシングとTTX動態に関わる遺伝子の中から、責任遺伝子を絞り込む必要がある。そこで、実験2で推定されたTTXセンシング関連遺伝子についてリアルタイムPCRによる発現解析をし、嗅覚器官と脳内での遺伝子発現の動態を精査するとともに、TTX溶液を鼻に滴下した個体についてもそれぞれ嗅神経と脳をサンプリングし、全RNAを抽出した後、cDNAを合成する。これらのcDNAを、実験2から責任遺伝子候補となった遺伝子のプローブを作成して、リアルタイムPCRによる発現解析を実施し、定量的に評価をすることによって、フグのフグ毒感知と体内動態・行動に関わる責任遺伝子を決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度のマイクロアレイによる遺伝子解析では,飼育魚については必要十分な標本が得られているが,予備的解析として有毒天然魚の解析も視野に入れていた。天然稚魚がほとんど採れておらず,標本を採集することが出来なかった。天然種苗の入手に係る購入および調査費用として使用する計画である。
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