研究課題/領域番号 |
24380111
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
中村 洋路 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 研究員 (90463182)
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研究分担者 |
藤原 篤志 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 主任研究員 (30443352)
安池 元重 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 研究員 (20604820)
中易 千早 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, グループ長 (00311225)
松山 知正 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 主任研究員 (20372021)
高野 倫一 独立行政法人水産総合研究センター, 増養殖研究所, 研究員 (40533998)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 魚病 / 免疫学 / バイオインフォマティクス |
研究概要 |
本年度では、非モデル生物におけるエピトープ予測の系を検討するために、エピトープのアミノ酸配列の傾向が良く調べられているヒトHLAの情報をリファレンスとして検証を行った。ヒトHLAの立体構造(アリル:HLA-A*2402、PDBコード:2BCK)に対して、アミノ酸9残基からなるエピトープペプチドをランダムに5000個作成してドッキングシミュレーションを行ったところ、HLA-A*2402で知られているアミノ酸残基の傾向がわずかではあるが再現された。この結果に基づいて、ヒラメのMHCクラスIa予測構造でもドッキングシミュレーションを行い、結合親和性が高かったペプチドについてアミノ酸残基の傾向を調べた。ヒラメのMHC構造は前年度で検証されたマウスMHC(PDBコード:1S7S)をもとに構築し、ペプチド構造は上記の5000個の配列で設計した。これと並行して、次世代シーケンサーを用いて、ヒラメ12個体からMHCクラスIa抗原結合部位のゲノムDNA配列を約17万本、各組織(脾臓、腎臓、白血球、腸)のcDNA配列を、それぞれ17万~21万本取得した。これらに対してクラスタリング解析を行い、各個体で最大で10のグループに分類することが出来た。従って、ヒラメは1個体あたり少なくとも5つのMHCクラスIa遺伝子座を持つことが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
攻撃試験等によるペプチド候補の評価については最終年度に行うこととしたが、ヒトHLAおよびヒラメMHCを用いたペプチドドッキングシミュレーション結果の検証により、ヒラメMHCと親和性の高いエピトープペプチドのアミノ酸残基の傾向を予測できるようになった。同時に、次世代シーケンサーを用いたヒラメMHC遺伝子座のDNA解読を行い、遺伝子座数を推定することに成功した。ここまでの研究手法はヒラメだけでなく他のあらゆる非モデル生物にも適用可能な方法であり、当初予想した以上の学術的な成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内寄生細菌Edwardsiella tardaが菌体外に放出する外膜小胞内のタンパク質74個、およびヒラメラブドウィルス(HIRRV)の糖タンパク質1個を抗原候補とし、これらからエピトープペプチドを探索する。両者の遺伝子のコードするアミノ酸配列を1残基ずつずらして9残基の可能なペプチド構造を構築し、AutoDockによるドッキングシミュレーションの系とアミノ酸のスコア付けに基づき、候補ペプチドを選抜する。選抜したペプチドを人工合成してヒラメ魚体もしくは培養細胞などに投与し、IFNγ量、INFγ遺伝子発現量、CD8陽性白血球数などを測定し、ペプチドの細胞性免疫誘導活性を評価する。また、ペプチド投与個体にE. tardaおよびHIRRV攻撃試験を行い、感染防御効果を評価する。これと並行してヒラメのMHC遺伝子座の数および各臓器における遺伝子発現量を推定し、免疫機能との関係を調べる。細胞性免疫誘導活性の評価結果からドッキングシミュレーションの計算パラメータを改善し、より有望なペプチドワクチン候補を探索する。最終年度としてこれらの結果の取りまとめを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒラメ魚体もしくは培養細胞へのエピトープペプチド候補の投与、それに伴うIFNγ量やCD8陽性白血球数などの測定、およびE. tardaやHIRRVによる攻撃試験を最終年度に行うこととしたため、そのための予算を繰り越す必要が生じた。 次年度の使用額については、エピトープペプチド人工合成のための費用、ペプチド投与実験のための各種試薬や実験機器の整備、ドッキングシミュレーション結果の解析用計算機の環境整備に充てる予定である。
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