研究課題
船底防汚塗料開発の有力な候補物質として選抜された紅藻ソゾ由来の含臭素非テルペノイドC15化合物のローレンシンの生合成に関わる臭素化酵素の解明に引き続き取り組んだ。天然藻体から酵素タンパク質の精製を試みたところ、MS/MS解析により、フィコエリスリンの混入がみられるものの、クローニングされた遺伝子から推定されるアミノ酸配列に一致するタンパク質が得られた。また、汎用基質であるMCDを使って反応を行ったところ、活性があることも確かめられた。これらの結果に加えて、天然の推定基質であるローレジオールに関する反応や推定立体構造などの検討を進めて、論文発表した。また、異なるC15化合物を生産するウラソゾ2株のバナジウム依存型ブロモペルオキシダーゼのクローニングにも成功し、その全長配列を決定した。セスキテルペノイドであるローリンテロールを生産するミツデソゾのブロモペルオキシダーゼの組み換えタンパク質を作製し、その酵素反応を調べた。その結果は学会発表した。紅藻ソゾ由来の含臭素化合物から船底防汚塗料開発候補としてオマエザレンを選抜し、生合成酵素研究を見据えて、全合成研究を行った。D-グルコースから合成した既知のアルデヒドから、E-オレフィンのブロモエーテル化反応による臭素原子を含む2連続不斉中心の立体選択的構築を鍵反応に、18段階でオマエザレンの全合成に成功した。その結果、オマエザレンの絶対立体配置を決定することができた。構造決定、付着阻害活性、生態毒性のデータと共にAngewandte Chemie International Editionに発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
ローレンシンを生産するウラソゾのブロモペルオキシダーゼは、本研究課題の最大の研究テーマであったが、まずはクローニングから酵素反応の解析までを終了して論文としてまとめることができた。また、他のソゾのブロモペルオキシダーゼの解析も順調に進んでいる。さらに、新たな研究ターゲットとしてオマエザレンをとりあげ、構造決定、活性評価、全合成を論文発表することができた。
将来の生合成研究を見据えた新たな含臭素化合物の全合成研究もとりいれながら、ソゾの化学的多様性と生合成酵素との関連を明らかにするため、基本的にはこれまで計画してきた内容に沿って研究を進めていく。
支払日が4月以降となったため、帳簿上生じたもの実際には平成25年度に全額使用済み
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Angewandte Chemie International Edition
巻: 53 ページ: 3909-3912
10.1002/anie.201311175
Bioscience, biotechnology, and biochemistry
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