研究概要 |
魚類の温度適応に関わる分子ネットワークの探索を目的として、次世代シーケンサを用いてメダカの温度馴化に伴って発現変動する転写産物の網羅的解析を行った。10および30℃で30日以上飼育したメダカを実験に用いた。これらのメダカより筋肉を採取し、全RNAの抽出およびmRNAの精製を行った。次に、Ion Total RNA-Seq Kit v2を用いて、cDNAライブラリーを作製し、転写産物の網羅的解析を行った。塩基配列の解析にはIon Torrent PGMシークエンサを用いた。塩基配列解析の結果、10および30℃に温度馴化させたメダカ筋肉において解析された塩基数は、それぞれ629.25および534.08Mbであった。さらに、リード数はそれぞれ5,364,077および4,675,370で、平均リード長はそれぞれ117および114塩基であった。また、CLC Genomics Workbenchを用いたde novoアセンブリングを行った後、10および30℃に温度馴化させたメダカ筋肉で発現している遺伝子のGene Ontology解析を行ったところ、両者に目立った差はみられなかった。一方、発現変動遺伝子を個々に調べたところ、ミオシン重鎖遺伝子群の発現変動が顕著であった。このほか、30℃馴化メダカにおいては、高温耐性ニジマスに発現が多い、HSP70およびdnaJ homologの発現増大がみられた。これに対して10℃馴化メダカでは、カルボン酸レダクターゼやデヒドロゲナーゼなど代謝関連の酵素発現量の増大がみられた。
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