研究課題
本研究では、日本の水産物に分布が確認されている食中毒菌であるリステリア菌について、その潜在的リスクを調査し、その制御法を確立する目的で研究を行った。リステリア菌は、海外においては生ハム、チーズ、サラダなどの非加熱喫食食品において分布が確認されており、免疫不全者等において致死率が高い傾向があるため、食品業界としてもその動態が注視されている。日本においては、加工度の高いネギトロやイクラといった水産加工品に分布が確認されているものの、それらの病原性や水産物における増殖性について、知見がほとんど存在しなかった。本研究ではこれらの実態を解明するため、日本の臨床分離株と過去に水産物等から分離された菌株との遺伝的差異をゲノム解析やDNAタイピングで確認し、海外において分離されている菌株と遺伝的な差異はほとんどなく、水産物等に分布している菌株により将来的に食中毒が発生する可能性か無いとは言い切れれないと結論付けた。水産食品中での増殖性に関しても、分布が確認されている水産物においては、リステリア菌の増殖を阻害する要因は含まれておらず、冷蔵流通中に増殖が起こることが確認されたため、その増殖抑制法についても研究を進めた。各種保存料や日持ち向上剤等を検討したところ、酸化防止剤として広く使用されているフェルラ酸にリステリア菌の抑制効果があることが今回新たに判明し、その添加方法、他薬剤との相乗効果、耐性の獲得性についても知見を得た。さらに、腸管内において定着、侵入にinlAがかかわっており、腸管上皮細胞へ到達したリステリア菌においてその発現が変化することも見出した。また、海藻より抽出した成分にリステリア菌の腸管付着性を阻害する能力があることも見出した。これらの研究により、水産物に分布しているリステリア菌の遺伝的特性とそのリスクが明らかとなり、新たな増殖制御法を確立することができた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLoS ONE
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