研究課題/領域番号 |
24380119
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
櫻井 清一 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (60334174)
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研究分担者 |
栗原 伸一 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (80292671)
丸山 敦史 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (90292672)
西山 未真 千葉大学, 園芸学研究科, 講師 (70323392)
霜浦 森平 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (40372354)
石田 貴士 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (30623467)
新開 章司 福岡女子大学, 文理学部, 准教授 (30335997)
大浦 裕二 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター, 主任研究員 (80355479)
藤田 武弘 和歌山大学, 観光学部, 教授 (70244663)
横山 繁樹 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 社会科学領域, 主任研究員 (30425590)
久保 雄生 山口県農林総合技術センター, 経営技術研究室, 専門研究員 (70539593)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 農業経営 / 農村多角化 / テーマ・コミュニティ / 農業経済学 |
研究概要 |
テーマ・コミュニティ化しつつある農村社会を舞台とした経済多角化行動と成果,並びに地域社会への影響を分析するため,本年度もコミュニティ系・マネジメント系・評価系という3つの柱を建て,それぞれ分析を進めた。 (コミュニティ系)高知県山間部の直売施設,女性起業組織の運営とその成果を分析し,農村コミュニティの再生に資するソーシャル・ビジネスの意義を考察した。また,食料アクセス問題が農村部でも深刻になっている実態を定量的に明らかにするとともに,アクセス改善に向けて市町村が果たしうる役割について,事例を類型的に整理した。 (マネジメント系)アメリカのCSA(Community Supported Agriculture)運営組織のマネジメント方式について,東海岸および西海岸のケースを比較考察し,1980年代の勃興期にとられていた経営スタイルは情報化の進展により多様化してきたが,安全性や環境問題に関心の高い消費者との直接コミュニケーションは継続されていることを明らかにした。また,インドネシアの伝統薬原料となる多様な資源について,農村での栽培・採取段階から消費地に至るまでの流通経路を明らかにした。さらにショウガ・ウコン等主要な原料の生産農家の行動を調査し,農家は販路の制約がある中でも品種の組み合わせや収穫時期の調整によって価格変動リスクを抑えている実態を明らかにした。 (評価系)農林業センサス個票データを利用し,離農者の多い農村が抱える地域要因を定量的に評価した。また,DPモラール・サーベイ法を用いて集落組織および農村女性組織における労務環境を分析し,組織運営上の改善点を抽出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで3つの系に分けて分析を進めてきたが,山間部の集落組織や女性起業組織を対象とした研究において,各系を横断しうる総合的な分析結果が公表されつつある。また,今年度より2010年農林業センサスのデータを利用した評価研究の成果も公表できた。 海外を対象とした分析では,アメリカのダイレクト・マーケティングのマネジメント方式に関する長期的視点からの分析が進展している。またインドネシアの薬草資源研究では,煩雑な産地から消費地までの生産・流通構造を概ね解明し,個々の経済主体の行動についても,今年度は産地に立地する主体(農家・産地商人など)の行動を具体的に解明できた。 また,近年注目を集めている食品アクセス問題に関連する課題を研究に取り込み,定量的手法を用いつつ社会的評価の試行を行うことができた。 テーマ・コミュニティの概念そのものに関する理論的考察と,社会的視点を活かした評価枠組の精緻化が残されているが,2年次までに想定していた進捗状況はおおむねクリアできているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は最終年度であるため,3つの系それぞれの課題を進めると同時に,全体の総合考察を行うこととする。そのために9月に開催される学会にて分科会を開催する予定である。 (系別分析)コミュニティ系では,中山間地域における経済活動を担うコミュニティ組織を主な対象として分析を継続する。マネジメント系では,国内では女性起業組織,海外ではダイレクト・マーケティングに関与する組織(欧米)のマネジメントや薬草資源生産・流通チェーンの価値分配状況について分析する。評価系では,食品アクセス問題の定量的評価とセンサスデータを活用した分析を継続する。 (総合的分析)集落組織または女性起業組織を対象として,DPモラール・サーベイ法に基づく労務環境分析を継続するとともに,その成果を組織の形態および運営制度と比較し,構成員の社会的・経済的欲求が組織活動を通じてどの程度実現しているかを評価する。その分析結果を踏まえ,QOL(生活の質)論の知見も考慮しながら,農村コミュニティにおける多角化経済活動の社会的意義を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者に由来する残額は,所属機関から直接経費を使用できない連携研究者の使用予定額のうち,主に旅費に残額が生じたためである。これは年度内に実施予定だった検討会を延期したことに由来する。 研究分担者に由来する残額の理由は様々であるが,主な理由は以下の2点である。1)旅費が想定よりも安く済んだ。2)複数の科学研究費を交付されている分担者で,自身が主査になっている課題を持っている者の場合,物品費を自身が主査を務める課題の経費から支出したため,結果として本課題での物品費使用額が少なめになった。 旅費について,昨年度実施できなかった現地検討会を本年5月に実施するため,旅費の使用額が増加する見込みである。また,9月開催の農業経営学会にて,本課題に関連する分科会の実施にエントリーしており,これが認められれば,複数の報告者が学会旅費を通年より多めに使用することになる。したがって,次年度研究費の多くは,旅費等として使用することになる。
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