研究課題/領域番号 |
24380121
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松本 武祝 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40202329)
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研究分担者 |
戸石 七生 東京大学, 農学生命科学研究科, 講師 (20622765)
安藤 光義 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (40261747)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水害常習地 / 社会的結束 / インフラストラクチャー |
研究実績の概要 |
この研究では、近世期には水害常襲地域として苦難の経験を重ね近代以降に穀倉地帯へと変貌した日本3地区と韓国1地区を対象に、「土地に刻まれた歴史」(古島敏雄)が各地域の社会的特性をいかにかたち作ってきたのかを比較研究することを目的として設定した。各地区固有のリスク対応が固有の社会的結束social cohesionを生み、それがインフラ整備の態様を規定する一方、その物的な整備水準が当該地区の生産力構造と社会的結束の形態を規定する。そうした相互規定的な関係を、具体的な地域の歴史と実情に即して実証的に分析することを課題としている。 松本は、おもに韓国全羅北道万頃江流域における植民地期の治水事業の展開過程を分析した。植民地権力による事業計画に対する地域住民の対応(事業推進の陳情、事業反対の示威など)を、朝鮮総督府の一次史料や新聞記事をもちいて分析した。戸石は、利根川流域の千葉県・佐倉地区を対象に、近世末から近代初期にかけての旧佐倉藩士による茶園の開拓と経営に関して、一次史料を渉猟しながら分析をおこなった。 安藤と松本は、災害と地域社会という観点をより広い視点から捉えるために、東日本大震災によって浮き彫りにされた東北地方の社会経済的特質を、明治以降の近現代史の文脈に位置づけて捉えるために、他の研究者との共同研究に加わって、共著を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査予定地であった新利根川土地改良区の旧知の職員が退職してしまったために、調査交渉に手間取り、まだ調査をおこなえていない。また、石川県・牛島地区の調査も、カウンターパートが急用で不在となってしまい、調査交渉が進まずに調査を実施できていない状態にある。韓国調査の場合も、研究協力員が2014年3月に大学正規教員として職を得たために多忙となり、現地調査が充分に進捗していない。 全体として現地調査の進捗度が想定よりも遅れており、そのために、個別の研究にはある程度の進展がみられるものの、共同研究メンバーによる総括的な共同研究会が組織できていない。
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今後の研究の推進方策 |
日本に関しては、当初の調査予定地である、新利根川土地改良区と石川県・牛島地区に対しては、今年度現地調査を行う。ただし、カウンターパートとの調整が不調に終わるケースも念頭に置き、調査地を現状よりも絞ることも想定しておく。その場合には、佐倉地区など、すでにある程度の調査を実施してきた地域に対して集中的な調査を行うこととする。韓国に関しては、研究協力者の協力を得ながら、全羅北道万頃江流域に関する調査と分析を深めてゆく。 (延長後の)最終年次として、共同研究メンバーによる総括的な共同研究会を開催して、共同研究のとりまとめを進めてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査予定地であった新利根川土地改良区の旧知の職員が退職してしまったために、調査交渉に手間取り、まだ調査をおこなえていない。また、石川県・牛島地区の調査も、カウンターパートが急用で不在となってしまい、調査交渉が進まずに現在まで調査を実施できていない状態にある。韓国調査の場合も、研究協力員が2014年3月に大学正規教員として職を得たために多忙となり、研究責任者単独での調査が中心となってしまい、その結果、現地調査が充分に進捗していない。
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次年度使用額の使用計画 |
新利根川土地改良区、石川県・牛島地区および韓国(全羅北道)を対象とした現地調査を行う。ただし、前二者でカウンターパートとの調整が不調になった場合には、佐倉地区で集中的に調査を行うこととする。韓国に関しては、研究協力者の協力を得ながら、全羅北道万頃江流域に関する調査と分析を深めてゆく。(延長後の)最終年次として、共同研究メンバーによる総括的な共同研究会を開催して、共同研究のとりまとめを進めてゆく。 そのために、旅費、謝金(専門的知識供与)として研究費を使用する。また、調査の結果をデータベース化するために謝金(アルバイト)支払、事務用品購入が必要となる。
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