研究課題/領域番号 |
24380123
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 順一 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80356302)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中国農業 / 農地貸借 / 企業の農業参入 / 取引費用 / 処理効果モデル |
研究概要 |
中国における農地貸借市場の発展は,農業労働力の農外への流出によって,その端緒が開かれ,農地制度改革,とりわけ請負経営権の強化がそれを後押ししてきた。本研究ではこうした先行研究の主張を支持しながらも,流動化を促す第3の要因として,貸借を仲介する組織(土地株式合作社)の役割に注目した。 土地株式合作制度とは,農地転用の正式なルートを迂回する手段として,1990年代初頭に広東省で考案され,その後各地に普及した制度である。現在,同制度は農地転用のみならず,その農業的な利用にも効力を発揮している。土地株式合作社が直営農場を開設する場合もあれば,土地利用権を大規模農家や企業,農民専業合作社にまとめて貸与する場合もある。 実証分析は,筆者が江蘇省の農村で独自に収集したデータを用いて行った。標本は江蘇省政府統計局の定点観測地点である300の村(蘇北,蘇中,蘇南からそれぞれ100村)を選択した。分析の方法としては,パラメトリックな処理効果モデルと,セミ・パラメトリックなPSM法を併用し,セレクション(合作社の有無)の内生性を考慮しながら,その農地の流動化・集積,農家以外の経営体の農業参入に及ぼす影響を計測した。 計量分析の結果は,土地株式合作社が農地の流動化や集積および農家以外の経営体の農業参入に,多大な貢献をなしていることを強く示唆している。地域によっては流動化が主目的ではないにせよ,合作社が農地の貸借を仲介することで取引費用が節減され,利用権の移動が急速に進行したのである。このような現象の背後には,合作社による株式の発行があるが,これは土地利用権と請負経営権を分離するための手段であって,株式発行それ自体が流動化を促進したわけではない。集団的土地所有という,社会主義の遺制を実質的に無効にする制度の導入により,農民が躊躇なく利用権を譲渡する条件が整った結果にほかならない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,現地調査で収集したデータを用いて計量分析を行い,その成果を国内の学術雑誌に投稿し,採択された。掲載誌は『農業経済研究』(日本農業経済学会)第85巻第1号と4号である。また,本課題のテーマについて,日本・中国の比較研究を行い,その論考を『農業と経済』80巻第4号(昭和堂)に公表した。 以上のことから,研究目的の達成度は,おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究の推進方策は,以下の3点にまとめられる。 ①平成26年度は,前年度に実施した分析をさらに発展させたうえで,その研究成果を外国の学術雑誌に投稿する。 ②中国(江蘇省江蘇省鎮江市)と日本(兵庫県養父市)で,企業の農業参入について現地での聞き取り調査を実施する。すでに前年度,鎮江市での予備調査を終了している。養父市とは昨年度,正式な研究協定を締結した。 ③研究成果のとりまとめを行い,それを本年10月にバングラデシュのダッカで開催されるアジア農業経済学会で報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
中国江蘇省において,農地の流動化と企業の農業参入に関する聞き取り調査を計画していたが,プリテストの実施にとどまったため,次年度使用額が発生した。 本年度は,前年度に計画していた江蘇省での調査を実施するとともに,兵庫県養父市において,企業の農業参入と農地の効率的利用に関する調査を実施する。
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