研究課題/領域番号 |
24380126
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
不破 信彦 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 教授 (90302538)
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研究分担者 |
黒崎 卓 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90293159)
伊藤 成朗 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (50450482)
久保 研介 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (40450506) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 農業生産性 / 児童労働 / 教育 / 農村貧困 / インド / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
本研究では、インドの農村貧困解決の鍵となると思われる二つの政策課題、すなわち「農業生産性向上」および「人的資本投資の拡大」のそれぞれの文脈おいて、行動経済学的知見を政策立案に明示的に組み込むことの有効性を探る基礎研究と位置付けられる。 平成26年度、「農業生産性向上」課題の実証研究に関しては、12月および3月に本研究代表者が西ベンガル州における実験圃場およびジャルカンド州ギリディ市を訪問した。その際に、実験圃場を設営した村における、現地住民によるSRI(System of Rice Intensification)農法を用いた耕作状況のモニターの継続、周辺農民に対する家計訪問調査(質問票による)を実施した。更に、ジャルカンド州ギリディ市にて3月12-13日に行われたIndian Statistical Institute主催の会議、「Agriculture and Rural Development Issues in Eastern India」において 招待講演者として招かれ、本科研費によるSRI農法導入実験に関して、その実験デザインおよび報告時点までの結果(SRI農法による増産効果、周辺農家によるSRI農法の受容行動等)について報告を行った。 アーンドラプラデシュ州における教育向上プロジェクトにおいては、米国にてマイノリテイ人種学生に対する効果が確認されている「価値確認(Values Affirmation)」と呼ばれる心理学的介入于法により学習効果を高める介入実験を実施した。現地のNGOであるM.V. Foundation及びハイデラバード近郊の中等学校5校の協力を得て、介入実験及びその前後の生徒に対する聞き取り調査、及び生徒の成績等の二次データの収集を実施した。また、アーンドラプレデシュ州農村にて過去に収集済の家計調査データのコンピュータ入力作業を修了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究計画の遅延の理由は主に以下の二点に起因している。 まず、西ベンガル州「農業生産性向上」課題の実証研究においては、共同研究者である、Indian Statistical Institute研究員・Pabitra Banik博士が、平成26年9月に急性の腎臓疾患と診断され緊急手術が必要となったことがある。(前年度にもBanik博士は、別途慢性の膵臓疾患により治療を受ける必要が生じているが、今回の病気はそれとはまた別件)そのため、平成26年度に実施を検討していた、西ベンガル州デブラ県に於けるSRI農法受容促進のための追加介入について、その実施を延期せざるを得なくなった。 さらに、アーンドラプラデシュ州における教育向上プロジェクトにおいても、別途プロジェクト進行の遅延につながる原因が発生した。すなわち、平成26年6月にテレンガーナ州が本調査地域であるアーンドラプラデシュ州から分離独立した。それに伴い、州政府における教育制度改革のため、本研究の現地パートナーであるNGO(M.V. Foundation)のスタッフがアドボカシー活勣等の本来業務多忙となり、各種作業に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本来であれば昨年度が最終年度であったが、上記の理由による遅延のため、今年度は以下の作業を行う予定である。西ベンガル州「農業生産性向上」課題の実証研究においては、Pabitra Banik博士の体調の回復を慎重に見届けつつ、以下の作業を行う。 1.平成26年度に実施をした西ベンガル州のSRI農法実験圃場設定村における周辺農家に対するフォローアップ調査のデータ入力 2.西ベンガル州のSRI農法実験圃場設定村の周辺農家によるSRI農法受容の速度が極めて遅いため、何らかの追加的な介入(例えば、SRIの技術指導と農業生産要素の無償供与を同時に行ってその効果をモニターする等)の余地を検討し、必要に応じて実施すること。 アーンドラプラデシュ州における教育向上プロジェクトにおいては、平成26年度に実施をした「価値確認」介入実験の効果を測定するべく、追加二次データを収集する。 また、アーンドラプレデシュ州農村にて過去に収集済の家計調査データのコンピュータ入力作業が昨年度に修了したため、そのデータをもとに、叙述統計の作成および計量経済分析に取り掛かる。
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次年度使用額が生じた理由 |
教育改善プロジェクトの一環として、生徒の学習状況調査を高校数校にて年度内に完了する予定であったが、調査の実施とデータ人力を依頼している現地NGOが、当初予想外の業務多忙(2014年6月のテレンガーナ州(本調査地域)分離独立に伴う教育制度改革のため当該NGOスタッフがアドボカシー活勣等の本来業務多忙となり作業に遅れが生じた)のため、データ人力の完了が4月以降にずれ込むこととなり、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、本来本年度中に完了する予定であった、生徒の学習状況調査データの収集および人力作業と、その後に行う予定の学校訪問による聞き取り調査を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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