研究課題/領域番号 |
24380131
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
田中 勉 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20144602)
|
研究分担者 |
井上 一哉 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00362765)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 浸透破壊 / パイピング / 締切り矢板 / 限界水頭差 / 無次元化 / 三次元浸透破壊実験 / 小型二次元浸透破壊実験 / 大型一次元浸透破壊実験 |
研究実績の概要 |
地盤の浸透破壊は、近年、農業用水利施設の改修や更新、土木工事の大規模化や大深度化に伴って新たな問題を引き起こし緊急に解決すべき課題となっている。本研究は、まず、流れの条件(一次元流、二次元流、二次元集中流、軸対称流、三次元流)を基本的視点として整理し、種々のケースについて実験を行い破壊メカニズムの解明を試みる。次に、実験成果に基づいたPrismatic failureの考え方を用いて、種々の流れ条件の地盤について浸透破壊に対する安定性評価を行う。そして、地盤の浸透破壊に対する限界水頭差の無次元化について考察を行い、実地盤の事例解析結果を踏まえながら、浸透破壊問題について総合的評価を行う。このように、本研究は、実験的・理論的観点から、実地盤の事例研究に基づいて、浸透破壊理論を体系的に構築しようとするものである。 本年度は、まず、種々の流れ条件(一次元流、二次元流、二次元集中流、軸対称流、三次元流)における一連の浸透破壊実験について結果を整理し、研究代表者らが提案するPrismatic failureの考え方について妥当性の評価を行った。その成果を基にして、書籍や雑誌類で取り上げられた51のトラブル事例を集積し要因分析を行い、問題点等について考察を行い、都市安全研究センター研究報告第20号に論文として投稿した。また、限界水頭差の無次元化について、まず、理論的にその可能性を示し、次に実際に数値解析を行い正しいことを明らかにした。また、二次元及びその1/2模型の小型二次元浸透破壊実験結果を用いて実験的に検証した。その結果を、農業農村工学会大会講演会(仙台市)、及び、国際地盤工学会議(in Seoul)で発表予定である。 三次元浸透破壊問題については、全ケースの実験が終了し、実験地盤の詳細解析を実施し、2016年10月に福岡市で開催された第15回国際地盤工学会アジア会議で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、三次元浸透破壊問題に関しては、解析及び実験結果について、国内及び国際学会に論文を投稿し、発表及び討論を行った。一連の実験ケースの詳細解析が終了し、研究報告書を作成中である。 次に、小型二次元浸透破壊問題に関しては、掘削なし及び掘削あり地盤の全ケースの理論解析を終了し、その検証実験を実施し、Prismatic failure conceptの実験的な検証を行った。現時点で90%の実験・解析・分析を終了している。理論的・実験的に得られた成果を地盤工学会(岡山市)に論文投稿し2016年9月の口頭発表に向けて準備を行っている。さらに、新しい研究テーマ「相対密度の異なる地盤、礫(または粗粒砂)地盤、押えフィルターのある地盤、層状堆積地盤」について、浸透流及び浸透破壊安定解析に取り組み、実験的検証と理論構築に向けて計画を立てているところである。 また、大型一次元浸透破壊実験に関しては、「実験装置の試作と予備実験」、「地盤支持力の試験装置の試作と予備実験」を終了し、次年度研究に向けて計画中である。 浸透破壊安全率算定にかかわる各種基準類に関する整理、分類、考察を終了し、理論的・実験的研究成果を踏まえて、学会論文に投稿すべく準備を進めているところである。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、次のようなテーマについて、系統的に研究を実施してゆくことを計画している。「大型一次元浸透破壊実験と支持力試験の実施」、「種々の流れ条件におけるPrismatic failureの考え方の妥当性評価」、「小型二次元浸透破壊実験(オリジナル二次元実験地盤の1/2模型実験)の実施」、「異温度流体(温水と冷水)による地盤浸透破壊特性の解明」、「浸透破壊事例の浸透流解析及び浸透破壊安定解析」、「著者らが提案した浸透破壊理論(Original and Extended Prismatic failure concept)の検証」、「研究成果の総合的評価と公表」、「書籍(地盤浸透破壊-事例解析の教えるところ-)の執筆にむけての準備」 今後、小型二次元浸透破壊実験における各種課題「スケール効果と相対密度の効果」及び「掘削あり及びなし地盤、押えフィルター、擬似異方透水性地盤、礫(または粗粒砂)地盤の浸透破壊」の理論解析と実験実施、大型一次元浸透破壊実験の実施、上昇浸透流のある地盤支持力試験の実施、実際のため池堤体材料を用いた小型二次元堤体パイピング破壊実験の実施を予定している。 さらに、浸透破壊理論の構築に向けて、三次元浸透破壊実験に関する報告書の作成、書籍「地盤浸透破壊-事例解析の教えるところ-」の執筆、限界水頭差の無次元化理論の構築と無次元化式の提案、各種基準類による限界水頭差の算定式に関する考察に向けて、鋭意、研究を進めているところである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、浸透破壊問題について、「全体的な破壊」と「パイピング破壊」に関する研究を並行して進めている。2014年度に農学研究科概算要求が当たり、2015年の9月から2016年の2月にかけて、水利実験室が改修された。これに伴い2015年度の後半に予定していた「平成23年台風15号において被災した高山池堤体材料を用いた浸透流による堤体破壊メカニズム解明実験」を延期する必要が生じた。 次年度使用額が生じた理由は、2015年度の研究計画において予定していた堤体盛土の浸透流実験装置(Progressive backward sloughing解析用)の組立と基礎実験を2016年度に計画変更したこと、また、小型二次元集中流条件についてPIV解析を実施すべく新規に試作した実験装置の組立と基礎実験を行う必要が生じたことによって、これら実施のための諸経費があらたに必要となったためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の研究において、「堤体盛土の浸透流による破壊実験(Progressive backward sloughing)」及び「複列矢板地盤の浸透破壊におけるPIV解析」の実施を考えており、そのための新規装置の組立と基礎実験、及び、理論解析を予定している。次年度使用額の一部を、これらを実施するための諸経費に充当の予定である。
|